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本当に米中貿易問題は楽観できる?『ジャパン・アズ・ナンバーワン』著者の盲点=矢口新

日本が「世界で最も経済成長のない国」に落ちたワケ

米国の日本政府に対する「年次改革要望書」に追従しているのは、小泉政権だけではないだろう。私は民主党政権を含む、敗戦後の歴代の政府は基本的に追随してきたと見ている。それは日米の力関係からすれば自然だからだ。

消費税を導入した「1989年の税制改革」を含む、外圧による日本の構造改革は、ボーゲル氏が言う「米側に有利な方向に持っていこうとする」ものだ。

日本がダメになったのは、一般の理解である「構造改革が不十分なため」ではなく、「まがりなりにも構造改革を受け入れたため」なのだ。

でないと、それまでのやり方で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だったものが、要望書にある構造改革を始めてから突然のように「世界で最も経済成長のない国」になるのはおかしい

中国は日本と同じ轍を踏まない

日本は自身の停滞を内省し、すべて己の至らなさとしたが、中国はどうだろうか? この間、隣国として外から日本を見ていた中国が、日本と同じ轍を踏むとは思えない。また、中国人が日本人のように「内省癖」があるとも思えない。

つまり、米国が手を緩めない限り戦うのではないか?

米国人・ボーゲル氏の見方は正しいか?

また上記の記述には、ボーゲル氏がヨーロッパ人ではなく、米国人であることを象徴したような見方がある。

米国が旧ソ連と対峙した冷戦下とは、状況が異なる。約35万人の中国人学生が米国で学び、両国の企業は各地でビジネスを展開している。お互いが絡み合い、逃れられないし、離れられない。小さな摩擦は避けられないが、軍事的に衝突する可能性などは少ないとみている。双方とも全面対立はダメと分かっている。

出典:同上

これは米国が新大陸の大国とはいえど、所詮は島国であることを示唆している。ボーゲル氏の見方が正しいなら、旧大陸では戦争がないことになる。

ところが、ヨーロッパなど「お互いが絡み合い、逃れられないし、離れられない」諸国こそが、何世紀にもわたってお互いを殲滅させるような戦争を行い、これでは誰もいなくなるとの危機感からEUができたのだ。

Next: どちらも死ぬまで戦う? 本当に米中貿易摩擦を楽観視して良いのか…

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