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黒田バズーカ3に期待できない今の相場でも、財政出動は直ちに効く=山崎和邦

直近の10月日銀会合は追加緩和なし、物価見通し引き下げという結果になりました。それでも依然として日銀の追加緩和に期待する声は多いようです。そこで今回は特別編として、好評配信中の有料メルマガ『投機の流儀』最新号より、今後の黒田バズーカ3の行方と「夢よもう一度」の老年期相場が大相場になるための条件を山崎和邦氏が解説します。

山崎和邦 週報『投機の流儀』vol.178 2015/11/01号より、マネーボイス編集部にて再構成

やるなら残りは一発だけ。「黒田3」は当面は出ない

(先週水曜に書いた予定原稿を一部含むがそのまま用いる)

日銀が3枚目のカードを使わずに持ち続ける限り売り方は売り崩すほどには売って出れない。それでも空売り比率41%は過去最高レベルだ。標記の通りだが、黒田総裁は追加緩和については「必要なら躊躇なくやる」と含みを持たせた。

日銀は10月30日開催の決定会合で物価目標の達成を再び半年先送りした。物価と景気の低迷で政策の手詰まり感は強い。15年の経済成長率は1.2%で、今の“踊り場”でも「基調は改善」と主張した(「2020年GDP600兆円を目指す」なら、成長率は毎年例外なく3%必須である)。

10月30日の決定会合で「黒田3」が出るという読みがあった。が、筆者は「出ない」と言ってきた。確たる論拠がある訳ではないが、史上最大の介入をした時の財務官だった頃から彼の言動は当世一級の策師であり相場師だから市場の思惑通りに動く人ではない。彼は財務省出身の異端児だ。だからこそ「カードを切れば効く」のだ。

内閣官房参与の重要な一人で、これも財務省出身の異端児である本田悦郎氏は日銀の追加緩和を進言していたらしいが、考え方を変えたらしい。

もし黒田3を撃ったら4は難しい(出口戦略などもともとないというのが筆者の見方だが)。4を撃てばそれを明確にしてしまう。中国リスクを考えると黒田3は今ではない方が良い、と考え方を変えたらしい。

本田悦郎氏は、前回の消費増税の決定寸前まで増税に反対し、「それは景気を弱めGDPを減らす結果になる」と猛反対していた。内格官房参与の浜田さんや本田さんの言い分がその通りになってしまったと今にして思えば、国家百年の計を無視しても彼らの方が現実的には正しかった。

日銀が追加緩和をやるなら残りは一発だけ、というのは共通した見方だ。

バズーカ砲は何発も撃てるものではない。「大胆な金融緩和」はやればやるほど「限界効用逓減の法則」という昔懐かしい法則が効いてしまう。現に日銀は年間80兆円も国債を買っている。国家予算にも近い数値だ。せいぜい国家予算と同額としても100兆円までであろう。そうすると黒田さんの言った「兵力の小出しはしない」の戦法原則を守れば黒田3は最低20兆円は要る。

だから10月末と言う見方は当たらなかった。追加緩和をやるなら10兆円では小さい。「出来ることは何でもやる」「躊躇なくやる」と言い切ってきた総裁だから、やるなら20兆円の増額をして100兆円ベースにするであろう。

11月6日に米雇用統計がある。これは「もろ刃の剣」として効くという方が現実的であろう。日本の史上最長の好景気は「いざなぎ景気」の57ヶ月だが、米国はすでに74カ月を超え息切れがする頃だろう。

日本は目先、11月16日にGDP速報値が出るが、弱含みなら補正予算の話が出やすくなる。よって、このGDP発表も「もろ刃の剣」となる。

従来2倍を超す大相場は政策と一体だった。もっとも、それは本当のところ健康体の市場の姿ではない。

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山崎和邦(やまざきかずくに)

山崎和邦

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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