米中貿易戦争の影響が出始めている
さて、リフィニティブのプロプライエタリー・リサーチによると、S&P500採用企業の18年第4四半期決算は前年同期比14.5%の増益となる見通しです。昨年10月時点の増益率予想は20.1%でしたので、大幅な下方修正になります。
また、S&P500企業の今後4四半期(19年第1四半期─19年第4四半期)の予想PERは15.1倍です。
PERベースでの割高感は払しょくされましたが、バフェット指数はまだ130%を超えています。株価の調整余地はきわめて大きいことだけは、明確に申し上げておきたいと思います。
また、注目しておきたいのは、中国経済が徐々に悪化してきている点です。
製造業PMIは節目の50を割り込みましたが、貿易面も米中貿易戦争の影響が出始めているようです。
中国の12月の貿易統計では、輸出が2年ぶりの大幅な落ち込みを記録し、輸入も減少しました。中国経済が19年に一段と減速し、世界的な需要が低下する可能性を示す内容といえます。
12月の輸出は前年同月比4.4%減で、主要市場のほとんどで需要が鈍化しました。輸入は前年比7.6%減と16年7月以降で最大の落ち込みとなりました。
世界経済が鈍化し、米関税による影響が強まるなか、輸出の伸びは予想以上に落ち込みました。輸入も内需の冷え込みを受けて大幅に減少しました。
今後数四半期も輸出、輸入ともに弱い状況が続くでしょう。
政策の緩和で中国国内の経済活動が今年下半期までに底を打つ可能性は低いとみられており、輸入の伸びは引き続き抑制されるでしょう。
中国が米国製品に課した報復関税は、中国の輸入の伸びに打撃を与えています。18年通年の米国からの大豆輸入は11年以降で初めて減少しました。
米中が今回の通商協議で合意に達したとしても、減速する中国経済への特効薬にはならないとの声が多くなってきています。
また、中国の米国向けの輸出から輸入を差し引いた対米貿易黒字は前年比17.2%増の3,233億ドルでした。黒字幅は過去最大だった17年を上回り、記録を更新しました。
トランプ政権は中国の巨額の対米黒字に強い不満があります。米中貿易協議の交渉期限を3月1日に控え、米国側の改善要求が一段と強まる可能性が高いでしょう。
対米輸出は11.3%増、米国からの輸入は0.7%増でした。米国の関税率引き上げの可能性をにらみ、米企業による駆け込み需要が膨らんだことが輸出増の要因とみられています。
一方、18年12月の黒字額は299億ドルと、単月で過去最大だった11月の356億ドルを下回りました。駆け込み需要が一服し、今後は反動で減少が続くことも予想されています。
中国は既に総額1兆2,000億ドルの米国産品の輸入拡大方針を示しており、米国は今月上旬の次官級協議で、中国が農産物や工業製品、エネルギー資源を「相当量」購入することを約束したとしています。
ただし、駆け引きが続くとみられる中、中国が早期に実行に移すかどうかは不透明な情勢です。
トランプ政権が問題視する貿易収支の不均衡について、中国政府が対米黒字を「24年までに解消する」案を示したと報じられています。
ただし、トランプ政権からは中国に目標の前倒しを求める意見が出ており、3月1日を期限とした貿易協議で一致点を見いだせるかは依然として不透明な状況です。
報道によれば、今月7-9日に北京で開いた次官級の貿易協議で、中国は対米黒字を今後6年間で解消する行程表を提示したもようです。
米国から1兆ドル超の輸入を増やすことを検討していようですが、これに対して米国は難色を示し、「今後2年間での是正」を要求したといいます。
米国にとって中国は最大の貿易赤字国ですが、中国側の発表した18年の貿易統計によると、中国の対米黒字は3,233億ドルと過去最大を更新しました。
米国は昨年5月の貿易協議で、20年までに2,000億ドル削減するよう中国に迫りましたが、折り合えませんでした。
次官級協議では、貿易不均衡是正のため中国が米国産品の輸入を大幅に拡大する方向性で一致したとみられますが、対米黒字をゼロにする時期に関しては隔たりが大きかったもようです。
中国による知的財産権の侵害問題など難題も残っており、今月30・31日に米国で予定する閣僚級の協議は厳しい折衝が予想されます。
18年の中国の貿易総額は12.6%増の4兆6,230億ドルでした。輸出は9.9%増、輸入は15.8%増でしたが、貿易黒字は16.2%減の3,518億ドルでした。