業績好調なハイテク株と銀行株が大きく寄与
さて、今回の米国株の戻りは、ハイテク株と銀行株が大きく寄与しています。
ハイテク株の戻りは顕著ですが、「クリスマス・クラッシュ」以降の戻りを見ると、最も戻しているのがネットフリックスで、一時50%を超える反発になっていました。
それに対して、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が保有するアップルは、戻りがわずか6%です。このように、銘柄ごとにかなりの差が出ています。
とはいえ、アマゾンやアルファベット、マイクロソフトなどは軒並み10%から20%の戻りとなっており、安値で購入できていれば、十分な収益が上がっている計算になります。
さて、問題はここからです。買い戻しの背景には、業績の堅調さに加え、米中貿易戦争の終結に向けた期待感があったといえます。
たしかに、これらの材料が株価を押し上げたのでしょう。しかし、そうれば心理的に押し上げられただけで、実態を伴っているとは言えないでしょう。
今後の業績も伸びは確実に鈍化していくでしょうから、株価の割安感は徐々に低下していきます。
そもそも、昨年の「クリスマス・クラッシュ」が行き過ぎだったとの判断が正しいかどうかも怪しいでしょう。
今後起きることは、何度も解説しているように、「バリュエーション調整」です。これが根本にありますので、株価が戻すのは難しいわけです。
以前から解説しているように、サイクル面でもかなり明確な天井確認ができています。
まずは景気指標です。もっともたしからしい、OECD景気先行指数は17年12月にピークを付けています。つまり、世界景気は1年以上前にピークアウトしていることが確認できています。
次は株価と原油の関係です。今回のMSCI世界株価指数の高値は18年1月で、原油価格は18年10月です。この9カ月のタイムラグは、過去と同じパターンです。
また、米国債とMSCI世界株価指数のピークのタイムラグは、今回は2年です。ハイテクバブル当時も2年でした。
このように、マクロ指標で見れば、株価のピークアウトと調整継続がほぼ確定しているといってよい状況です。
このような中で、株価が高値をすぐに更新するとの前提で株式投資を行うことには、かなり無理があることがわかるでしょう。まして、18年の高値を超えるようなことがあれば、むしろ相当驚きなわけです。過去の経験則が全く通じないことになります。
その可能性を100%否定するつもりはありません。トランプ政権が尋常ではない政策を持ち出し、株価対策を行えば、株価が反転して高値を超える可能性はゼロではないでしょう。
しかし、投資判断とは、そのような不確かなものを前提に行うことはあり得ません。あくまで過去の経験則と現状分析を行ったうえで、判断すべきものでしょう。
まずはセオリーに乗ることが肝要です。そうであれば、いまは長期的な投資は見送りとの判断になるはずです。しかし、それでは何も生まれません。だからこそ、今年は「トレーディングの年」となるわけです。
「Buy and Hold」、つまり買持ちして長期間持ち続けるのは、今年は通用しないとの考え方です。したがって、今回のような安値からの急激な戻りで上手く買うことができていれば、早めに利益確定することが肝要です。
そして、空売りを行うことが重要です。今年から来年は、空売りやショートなどができないと、収益機会は半減するでしょう。