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どう見る東芝。投機家と元電機メーカー幹部、2つの視点=山崎和邦

いまの東芝株に「ナンピン買い下がり」投資法は通用するのか――今回は特別編として、粉飾問題で揺れる名門・東芝に関する山崎和邦氏と読者とのやりとりを2つご紹介します。

山崎和邦 週報『投機の流儀』vol.180 2015/11/15号より、マネーボイス編集部にて再構成

東芝株は「買い」なのか?名門企業の強みと弱み、2つの視点

どう見る東芝(1)山崎和邦の投機家としての視点

現役投資家・Kさんからの質問:

山崎先生。いつもメルマガ楽しみにしております。下記質問いたします。

大型銘柄を徹底ナンピンし、株券を“焼き捨てる”Tさん」のようなスタンスで投資をするとした場合に、いまの東芝株は適しているとお考えになりますか?

山崎和邦の回答:

今は亡き南紀の元町長Tさんは、かつて私が野村時代に、「そんな不況産業の大型株に妙味はない」というこちらの説得に耳を一切貸さず、日立をはじめとする大型株の安値を買い下がって、株式資産を2年で3倍にした大投資家です。

このメルマガは投資指南書ではないし、個々が持つべき銘柄は個人個人の資金の性格や方針によって違うから触れないのが原則ですが、東芝は今年の東証における大事件ですし、種々の意味で象徴的な銘柄ですから、ぜひ述べさせていただきます。

さて、今回の東芝は、決算に意図的粉飾が大いにありましたが、技術や製品や製造現場には粉飾はなく、実業として健在です。そのため必ず「名門企業」としての復活があると信じます。

私が54年前に野村に入社した時から現在まで、日立と東芝の株価は1対0.7くらいが普通でしたし、東芝の方が高い時も一時はありました。東芝の株価が日立の半値ということは、今回を含めて3回だけだったと記憶します。

1回はココム違反の事件の時だったと思います。東芝が日立の半値になったら東芝を買って日立を売る、というヘッジ行為もやりました。

東芝は、時の総理大臣をも恐れさせた経団連会長を2人輩出し、また東証社長、郵政社長を輩出した企業です。

国鉄民営化に貢献した経団連会長の土光敏夫さんも、時の総理大臣に向かって「もう、きみには頼まない」と怒った石坂泰三さんも、草葉の陰から応援しているでしょう。今度の社外取締役は、概ね全員が、名社長だった西室泰三さん(今の日本郵政社長)の息がかかった人でもあります。

西室さんは恐らく来年、花道で辞任されて東芝の社外役員として指導力を発揮されることになるかもしれません。そうなれば私の個人的な気持ちとしては「それだけで200円高する」と言いたいところです。根拠はありません。

オリンパスの例を見てみましょう。大粉飾事件で株価は5分の1になり、決算に意図的な大粉飾があったが技術に粉飾はなかったし製品には粉飾はなかった、この点で東芝と同じです。フォルクスワーゲンともタカタとも違います。オリンパスは、あの事件の最安値から見れば今の株価はちょうど10倍です。

株主構成の虚偽報告だけで上場廃止になった西武鉄道の例も、現場の実業には何らの故障はなかったから再上昇して立派な株価を付けています。

ただし、いま申し上げたことはすべて長期の視点です。紀州南部の元町長Tさんは2年だったが、もっと長期で見ましょう。

また、買う価格はいまが良いのか、大勢下降に向かう頃が良いのか不明ですから、私なら恐々と少しずつ、何回にも分けて中長期で株価を見ながら買います。

私は、東芝が上場廃止でストップ安になれば買って再上場を待つ好機と思っていましたが、その機会はなさそうですね。元東証社長を務めた人が社長をやっていた会社ですし、経団連名会長を2人輩出した企業、しかも現在の郵政社長の古巣ですからね。

ちなみに、郵政のように親会社と子会社が同時に上場するなんて異例中の異例であって、恐らく東証始まって以来かもしれません。国策会社だからでしょうが、西室さんが社長だからでもありましょう。

ただし株価は別問題です。

東芝は3年ぶりの安値ですが、いまだ半値にもなっていません。「3年ぶり」と言っても、3年前は名門企業として正当な決算をしていると思われていた株価です。オリンパスは事件発覚後に株価が約5分の1になりました。

11月14日(金)の日経新聞にも、「東芝に市場の不信感」「消極的な情報開示を嫌気した」とありますね。

Next: どう見る東芝(2)元大手電機メーカー幹部・Kさんの視点

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山崎和邦(やまざきかずくに)

山崎和邦

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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