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主要な半導体メーカーの90%が導入に、電子産業で活用されるブロックチェーンの現状=高島康司

3)情報の幅広い共有

生産拠点が世界的に分散し、製品の製造に多くの企業が関与している状況では、納品や出荷される部品の情報を共有していることが重要になる。すでにこれは既存のサプライチェーンでも実現している。

しかし、すべての情報が関係している企業の間で共有されているわけではない。製品の情報はそれぞれの企業が独自に管理しているので、他の企業に有用な情報が共有されてないケースも多い。

たとえば、小売と部品メーカーはその典型かもしれない。最終製品の売れ行きのデータは、年度末にならないと公表されない場合が多い。それはリアルタイムの情報ではない。これが原因となり、部品メーカーは過剰な在庫を抱えるはめになったり、逆に部品の製造が間に合わず、納入できないケースも出て来る。

そうした状況で、もし関係企業が持つ部品毎の幅広い情報がリアルタイムで共有できるなら、過剰在庫や生産不足などの問題は回避できる。たとえば、小売は日々の売上を自動的にブロックチェーンに登録できれば、関係企業は適切な生産計画を立てることができるはずだ。

4)在庫データの共有

特にスマホなどの電子機器の分野では、モデルチェンジのスピードが極端に速い。モデルチェンジがあるたびに、新しく開発された部品が大量に必要になる。

一方、旧モデルの古い部品も一定数は確保しておかなければならない。修理などのためにそうした部品の需要はいつも存在しているからである。しかし、現行のサプライチェーンのシステムでは、在庫管理の繁雑さを回避する必要から、こうした古いモデルの部品まで記録し、他のメーカーとそれを共有するところはめったにない。そのため、自分の在庫にはない古い部品が必要となったとき、その調達先を探すには時間がかかるか、調達できないこともある。

このような状況でブロックチェーンのシステムを活用して、あらゆるメーカーの在庫状況を分散台帳に記録することができれば、古い部品の調達問題は解消される。ただ、もちろんこの場合、競合他社に自社の在庫状況を公開したくないメーカーもあるはずだ。そのような状況を考慮して、ブロックチェーンに記録する在庫データは匿名にすることができる。

5)企業相互のローン

あらゆるメーカーの電子機器を組み立てるEMSのような企業は、一時的に資金繰りに困ることがある。一般的に、EMSに組み立てを依頼している企業の支払いは90日間隔で行われるのに対し、EMSの部品の調達先への支払い間隔は30日だ。この期間のずれから、EMSは組み立てた製品の支払いを受ける前に、部品メーカーへの支払いを行わなければならない。この期間のギャップが原因となり、資金繰りに一時的に困るEMSも出て来る

そのような状況で、もし資金的に余裕のある企業がEMSにローンを提供できれば、この問題は解決できる。EMSにはメーカーとの契約が成立しているので、将来の支払い能力は証明されている。返済不能になる危険性は少ない。また、資金を融通する企業にしても、低利であっても金利収入は利益になる。

こうしたEMSを中心とした企業間の資金の融通をブロックチェーンの分散台帳に記録すれば、安全で信頼性の高いローンの提供が可能になる。

Next: 電子部品の分野でこれから期待されるブロックチェーンのプロジェクトとは?

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