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小売りで最も売上げが多い食品スーパーは、なぜコンビニよりも店舗展開されないのか?=吉田繁治

【米国のSMチェーンは、生鮮をグロサリー化した】

店舗PBである生鮮の商品開発で量の優位を作らなくても、商売ができたのがわが国のSMです。米国のSMは生鮮を生のままに売ることは少なく、生鮮もグロサリー化しました。

たとえば肉は、ハイエンドの食品スーパー(ディーン&デリューカなど)を除き、冷凍のままのカタマリで売っています。米国でも家業の肉屋は生の肉を売っていました(欧州も同じ)。チェーン型SMはこれを冷凍化したのです。

【日本では…】

日本では解凍して、陳列の消費期限を3日に短くして売っています。このため、量の優位が出にくかった。

以上が、わが国の食品SMの平均店舗数がチェーンストア以前の30店でとどまっている理由です。商品開発がなく、卸からの小口仕入れと物流で商売できるとチェーン店の店舗数を増やしても有利にならない。NB商品の仕入れが便利だったからです。

【コンビニは?】

コンビニは商品開発型なので、店舗数を増やすと商品価値を高める基盤ができることから、1万店以上になったのです。

食品SMが店舗数を増やして店舗数の多さ、つまり1品目の販売数の多さが有利になるように転じるには、生鮮のPBで高い商品価値を作る必要があります。

食べる顧客にとっての商品価値は、「品質÷価格」です。生鮮の品質は「見かけ、鮮度、味」です。「見かけ、鮮度、味」÷価格、つまり、食べる顧客にとっての商品価値を、他より高めることです。これが、SMの売上と店舗数増加の突破口です。

ところが、店舗PBである生鮮の商品価値に気が付いているSMの経営者は少ない(経験的に言って、経営者の10人に1人でしょうか)です。まず、価格の低さ・高さは分っても、「品質÷価格」で示す商品価値についての理解が浅い。「NBの仕入れ~販売業」と考えてきたからです。生鮮は、SMのPBだという認識も浅い。

平均30店にとどまっていて、店舗数を増やしても、コンビニのようには顧客にとっての商品価値で有利にならない理由は何かということへ、真正面からの回答をもっていません。

【コンビニ】

コンビニは商品開発型なので、店舗数が多いと明確に商品価値の高さにおいて有利になります。開発商品の1品目当たりの製造数が増え、原材料の仕入れ量が増えるからです。担当のマーチャンダイザーも、少数の品目の開発に責任を持てます。

【まとめれば】

セブンイレブンは国内2万店なので、取り扱い商品のほぼ全部の販売数(=商品開発数)でダントツのナンバー1です。このため1店の売上が他より40%以上大きく、その結果として増加店数も1位です。開発新商品の投入数でも、ナンバーワンです。

わが国特有のことですが、食品SMの平均店舗数が他の業種のチェーン店数よりはるかに少ない理由は、
・売上の40%のグロサリーと日配は卸からのNB仕入れ型
・売上の60%の生鮮5部門では、各店舗で零細な量の製造を行っていて、店舗数の多さの有利さが出ないから。5店舗のローカルチェーンも残っている

今回は、金融と世界経済論とは趣を変えたように見える、商品開発・流通論です。根本のミクロ経済学的な原理は金融商品と同じですが、チェーンストアの商品開発論は外観が違いますね。

【英国産業革命のときの職人生産から近代工業への変化と同じ】

商品開発論は、「国富論」のアダム・スミスが書いたピンの製造(1776年)の原理と、変わることはありません。ベルトコンベアでの多段階分業のためには、「製造数=販売数」の大きさが必要だからです。そのため、商品構成での標準化店舗数の多さをチェーンと言っています。

車も同じです。2000年には、トップメーカーがグロバール400万台でした。今は、1000万台規模になっています。商品開発のセブンイレブンのフランチャイジーの店舗数(製造数=販売店数×1店平均売れ数)が増えたことと軌を一にしています。

産業は、同時発展します。エレクトロニクスでは、日本が負けてしまったスマホの生産数=販売数です。最先端の商品であるスマホの世界販売数負けたことは、日本の製造業が2010年ころ中国に追い抜かれてたことを象徴しています。

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