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小売りで最も売上げが多い食品スーパーは、なぜコンビニよりも店舗展開されないのか?=吉田繁治

【米国の卸売業は消滅した】

戦後の1950年代までは米国でも家業店が多かったので、卸売業がありました。60年代、70年代、80年代で、一部を除き消えました。原因は、チェーンストアの店舗数が大規模化してPB開発を行ってきたからです。

米国での卸は、およそ、病院と調剤薬局(米国型ドラッグストア:医療用医薬の調剤売上が80%以上)が相手の医薬品だけになっています。病院と調剤薬局は、医薬のPB開発はしないから(ゼロではありませんが、少ない)です。

【食品SMのPB商品は少なかった】

わが国のSMでは、2000年ま、PB商品化がほとんどなかったため、1店が小さくても仕入れができ、商品価値で劣位にならず商売ができてきました。まずこれが、わが国のSMの平均規模が30店と少ない理由です。NB卸の発達のため、5店でも30店でも仕入れ・販売ができたのです。

NB商品の卸からの仕入れでは、30店より100店が有利という商品条件は少なかったから(ゼロではありません。仕入価格で、割引リベートを含んでも数%以下)です。

【生鮮商品での、わが国の固有な事情】

もう一点、わが国の食品SMの特有な事情として、生鮮5部門(青果、肉、魚、総菜、弁当)の売上構成比の大きさがあります。平均10億円の店舗で、生鮮5部門が平均では50%を占めます。

(注)加工食品の日配(毎日、発注・補充する食品)を入れれば65%です。

【鮮魚の事例】

魚の例を示します。鮮魚ではもっとも売れるマグロの刺身。これは、インド洋やアマダガスカルの遠洋漁業で採ったものを冷凍し、日本の漁港に水揚げしています。インド洋で採っても、水揚げした港がマグロの産地になります(日本の食品法)。下関の名産とされるフグでも、玄界灘でとれたものはごく少量です。

解凍し、解体して、刺身にしています。日本の食文化では、ナマの生鮮をナマのまま食べることが、米国より数十倍も多いからです。

【米国の生鮮】

日本食は近年、米国でも人気がありますが、食品SMで刺身や寿司を買う人はマレです。肉は、ほとんどを冷凍のカタマリで買い、数週間分を冷蔵庫に保管し少量を解凍して調理します。

青果(果物と野菜)は、大規模な農場で採った直後に4度Cの20トン冷蔵車に入れて、店舗に物流するコールドチェーンです。店頭陳列の消費期限が10日間と長い。コールドチェーンのない日本のSMでは腐る期間です。

【日本人の食文化】

わが国では生鮮のナマ食が多く、店頭での消費期限(品質が劣化するまでの時間)が1日しかない(肉は3日間)。日本の食品SMでは、どういう方法でこれを売っているか?3つです。

(1)地域の魚屋を店舗に入れて、刺身を作って売っている。コンセッショナリー・チェーン(妥協型チェーン)と言いますが、食品SMはこの方法をとったのです。デパ地下と同じ方法です。

(2)自社の鮮魚担当が、店舗のバックヤードで刺身を作る

(3)セントラルキッチンになる工場で作って、店舗に1日1回、配送する。消費期限が1日と短いので、大量には作れない。

【零細な加工・製造数】

以上のように、30店の食品SMと100店の食品SMも、販売商品の開発製造という点ではともに零細です。100店舗が店舗PBである生鮮商品の製造量の面で有利で、顧客にとっての商品価値(品質÷価格)が高いということはなかったのです。

Next: 日本でコンビニが1万点以上も展開するに至った理由とは…

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