日本のコンビニの店舗数は総計5.5万店、食品スーパー(SM)の3倍です。日本では早くから多店舗展開していたのですが、なぜこんな差がついてしまったのかを解説します。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2019年2月20日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
食品スーパーの開発マーチャンダイジングの方法
我が国の小売業でもっとも売上が大きいのは食品スーパー
流通の専門誌『販売革新』に、4年前から「新しいチェーンストア理論:再考と展開」というシリーズを連載しています。
書き始めた理由は、渥美俊一氏亡きあと、チェーンストア理論を進化・発展させて述べる人がいなくなったからです。渥美氏のチェーンストア理論は、ウォルマートが始めたサプライチェーン前の1980年代までのものでした。
商品開発論(=マーチャンダイザー論)は、破産したシアーズの1970年代のものでした。このため食品では、米国で進んだ「生鮮のグロサリー化論」だったのです。お弁当と総菜を売る日本型コンビニは否定していました。店内調理は、もちろん否定です。
来月号で41回目です。1冊の単行本より、長くなりました。最近2回は、「食品スーパーの開発マーチャンダイジングの方法」を書いています。インターネット上の商業界WEBでも、連載を続けています。
【SPA】
ユニクロやニトリは米国で、中国で企画製造する専門店チェーンが輩出した1980年代の中期から、SPA(製造直売型の専門店)になっています。
メーカーが作った商品を仕入れて陳列し、販売するのではない。中国、近年は人件費が上がった中国よりコストが低いインドネシア、ベトナム、カンボジアを含め、東南アジア全域の工場で商品を作り、輸入して日本で販売しています。
アップルと同じ、ファブレスメーカー(工場を持たないメーカーという業態)です。アップルは台湾のホンファイの中国工場で、iPhoneを作っています。
【最も古くから多店舗にしたSMだが…】
わが国の小売業でもっとも売上が大きいのは、全国で1万8611店の食品スーパーです。総売り上げは、18兆円。1店平均10億円です(2017年)。わが国の食品と飲料の総需要40兆円のうち、45%をSMが売っています。
食品スーパーは米国では100年前から、日本では1970年代から、もっとも早くチェーン化を目指す多店舗経営になっています。需要額が大きかったからです。
しかし、このチェーン化とは
・「商品価値の高い商品」の企画・製造ができる条件を作るため
・店舗数を500店以上に増やすこと
(注)日本では、チェーンストアは、連鎖店と訳すだけで、画一的な商品構成の店舗としてだけ受け取られました。消費者にとってNBより高い商品開発を作るという面が無視されたのです。
日米SMの平均店舗数には、大きな差があります。
・米国のSMでは1位のクローガーが3,825店
・スーパーバリュが1,588店
・顧客満足度が全米ナンバーワンのパブリックスも5,000平米以上の大型SMが1,200店
・2万平米のウォルマートも生鮮とグロサリーの食品売上が大きいのですが、5,284店(2016年)
チェーン志向の企業群で最も古いわが国のSMの店舗数がなぜ、平均30店で止まっているのか。誰でも、素朴に疑問に思うでしょう。