「3回目の米朝会談が実現する可能性はあるが、急速には進まない」
一方でトランプ大統領は、「3回目の首脳会談が実現する可能性はある。それは少しずつ進むプロセスであり、急速には進まない」としています。
この「急速には進まない」というのは、来年の大統領選挙をにらんでのことです。いま問題をすべて解決してしまえば、選挙選のためのネタがなくなります。
北朝鮮情勢の鎮静化を自らの手柄にすれば、大統領選が戦いやすくなると信じていますので、そう簡単に事態の解決には至らないことになります。それは、米国の指導部も了承済みでしょう。というよりも、指導部の指示でそのように動いているはずです。
トランプ大統領は、対北朝鮮制裁の一部を緩和する可能性について、文大統領との会談で「人道面でのこと」と韓国による食糧支援の可能性について協議したとしています。
そのうえで、制裁について「われわれはいつでも追加することが可能だが、現時点でそれ追加制裁を望んでいない」としています。現時点で米国に被害が出ているわけではありませんので、これ以上の制裁も理由付けが難しいというのが実態です。
最終目標は「北朝鮮の完全非核化」で合意
一方、文大統領は、合意に至らなかったハノイでの2回目の米朝首脳会談について、「失敗ではなく、長いプロセスの一部と捉えている」としています。
そのうえで、今回の米韓首脳会談では、北朝鮮の完全な非核化を「最終目標」とすることでトランプ大統領と合意したとしています。
米国の後ろ盾ができましたので、これで文大統領はかなり気が楽になったでしょう。
文大統領は「われわれが現在直面している重要な任務は対話の勢いを維持するとともに、第3回米朝首脳会談が近い将来に開催されるという前向きな見通しを国際社会に示すことだ」としています。
もちろん、そのまえに南北首脳会談が実施され、地ならしが行われることになるでしょう。
米韓首脳会談後に韓国側が出した声明によると、文大統領はトランプ大統領に対して、金委員長との南北首脳会談開催に向けて取り組むと表明したようです。
また声明は、「両大統領は、朝鮮半島の和平プロセスにはトップダウンのアプローチが引き続き不可欠との考えで一致した。トランプ大統領は金委員長との対話に向けたドアは常に開いていることを強調した」としています。
これまでの方針に則った発言といえます。
しかし、韓国政府当局者は、「次の南北首脳会談のタイミングや場所については何も決まっていない」としています。
ただし、文大統領はトランプ大統領に対して、南北首脳会談の早期開催に向けて北朝鮮側に積極的に働きかける意向を伝え、トランプ大統領は北朝鮮の現在の方針についてできるだけ早く共有するよう文大統領に求めたとしています。
トランプ大統領は北朝鮮との対話について「多様で詳細な合意がまとまる可能性がある。少しずつ解決することが可能だ。しかし、現段階でわれわれは大きな問題について話している。それとは核兵器を廃棄させる必要性だ」としています。
この大きな難題を解決するために、直接対話で失敗した教訓から、今一度、交渉に韓国を間に挟み、北朝鮮側の態度を軟化させたうえで次のステップに行くことがベストと判断したことになります。