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安倍総理が国会質疑で答えなかった年金運用の「不都合な事実」=近藤駿介

安倍総理が触れなかった年金運用の「不都合な事実」

安倍総理は「33兆円プラスになっている」と2回も胸を張って答弁をしていましたが、そのほとんどが債券中心の旧基本ポートフォリオによる2014年12月までの収益です。

安倍総理の肝いりで変更されたリスク資産中心とした新基本ポートフォリオで運用されている2015年1月~9月までの収益額は2兆8245億円のマイナスに転じているという「不都合な事実」については、総理は一切触れませんでした。

「どのくらい収益が上がっているか」という安倍流「バックワード・ルッキング」で見るならば、リスク資産を中心とした新基本ポートフォリオへの変更は全く収益を生んでいないということになりますから、野党側はそこをどうするつもりなのかを追求するべきだったはずですが、こうした質疑は全く行われませんでした。

実際には約5.5兆円の損失が発生か

さて、週末8日の金融市場は、12月の雇用統計で米国経済の堅調さが確認されたにも関わらず大荒れの展開となり、NYダウは前日比167ドル下落の16,346ドル、為替市場では117円44銭まで円高が進行しました。これを受けて日経平均先物は8日の現物の引値から442円安い17,255円まで下落しています。

公的年金が過去最大の約7.9兆円の損失を出した2015年9月末時点の日経平均株価は17,388円ですから、連休明けの日経平均株価がこの水準を下回って来る可能性が高まっています。

「年金積立金は国内外の債券と株式の組合せで運用しているものであり、日経平均株価等の国内株価の指標がそのまま運用収益に反映されるものではない」ことは事実ですが、問題なのは、「国内株式」以外の「外国株式」と「外国債券」も昨年9月末の水準を下回ってきていることです。

8日時点で、公的年金運用において「外国債券」のベンチマークに採用されている「シティ世界国債(除く日本;円ベース)」は昨年9月末比で2.9%のマイナス、「外国株式」のベンチマークに使われている「MSCI KOKUSAI(USDベース)」は同1.8%のマイナス、さらに為替も9月末の119円84銭から117円44銭へと2%の円高になっています。

こうした市場価格の変化をもとにGPIFの収益額を推計(あくまで机上の概算)してみると、2015年10~12月期は約4兆9000億円のプラス、そして年明け以降は5兆5000億円のマイナスとなります。その結果、年金資産規模は9月末の135兆1087億円から約6000億円減った134兆5100億円程度だと想像されます。

山井議員は「4兆円位の年金がこの4日間で運用損になっているのではないか」と政府を追及しましたが、実際にはそれを遥かに上回る約5.5兆円の損失が発生している可能性があると思われます。

「フォワード・ルッキングな分析を踏まえて長期的な観点から設定」した、リスク資産中心のポートフォリオに変更した直後に、7.9兆円という過去最大の損失を出したのに続いて、それに次ぐ損失を出そうとしていることは看過できないことのはずです。

Next: 年金運用に関して議論すべき本当の問題点

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