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安倍総理が国会質疑で答えなかった年金運用の「不都合な事実」=近藤駿介

年金運用に関して議論すべき本当の問題点

そもそも公的年金の運用で株式などのリスク資産を増やしたのは「アベノミクスでデフレは終わった」という理由からでした。しかし、政府と日銀が掲げる「2%の物価安定目標」の達成時期は何回も先送りされ、「もはやインフレは期待できない」といえる状況に後戻りしています。

さらに、黒田日銀総裁は「わが国の景気についてですが、企業部門・家計部門ともに、所得から 支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続けていると考えています。<中略>リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられます」(2015/12/21付「総裁記者会見要旨」)と、日本経済の「リスクは海外にある」とオウムのように繰り返してきています。

日本経済のリスクが海外要因にあることを認識しながら、なぜ「海外資産」の割合を増やす必要があったのか、「もはやインフレは期待できない」と思われている中で国内株式の比率を高めに維持する理由があるのか等々、年金運用に関して議論すべき問題はいくつもあるように思います。

皮肉なことですが、昨年9月末から直近までの期間で、最もパフォーマンスが良かったのは、有識者の「フォワード・ルッキングな分析」の結果減らされた「国内債券」であり、この期間のパフォーマンスは1.15%となっています。

もし、公的年金の資産配分を決める有識者メンバー達に「フォワード・ルッキングな分析能力」が備わっていたら、「国内債券」中心の基本ポートフォリオを変更することはなかったはずです。

幼稚な質問をする野党議員と、「バックワード・ルッキング」の自画自賛答弁を繰り返す総理が繰り広げる国会質疑から建設的な解決策が出てくることは期待し難いと言わざるを得ません。

「出口のない金融緩和」を続ける中央銀行と、「引き返すことのできない年金運用」に将来を託す日本。

「フォワード・ルッキングな分析」に基づく限り、明るい未来を思い描くことは当面できそうもありません。

【関連】金融政策の限界を知る2016年~世にも馬鹿げた「異次元の金融緩和」=近藤駿介

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年1月9日号)より
※本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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