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慰安婦20万人の虚構=『正論』元編集長・上島嘉郎

これは今日の人権問題でありません。問題の本質は、日本が併合時代の朝鮮半島で、国家として計画的に軍・官憲を動員して大勢の若い女性を無理やり慰安婦にし、戦地の慰安所に送り込んだかどうかです。

日本では昭和33(1958)年に売春防止法が施行されるまで公娼制度がありました。事実としては、売春が合法だった時代の戦地に民間業者が経営する遊郭があり、そこで朝鮮人(当時は日本国民)慰安婦が働いて報酬を得ていたということです。

当時は日本も朝鮮半島も貧しかった。貧困が原因で若い女性が「身売り」することは珍しくありませんでした。そのことを今日の人権観に引きつけて非難しても筋違いというほかありません。

で、20万人という数字の虚構です。

実は、現代史家の秦郁彦氏によってこの数字が誇大であることは平成10(1998)年に指摘されているのです。

秦氏は、政府が集めた二百数十点に及ぶ公式文書を調べ直すとともに、それ以外の外務省資料や警察統計などにも当たったうえで、慰安婦の総数は1万数千人と結論づけました。

内訳も、大部分を占めるとされた朝鮮人女性は2割程度で、日本内地の女性の方が多く、秦教授はそれまで「慰安婦総数は6万~9万人で、7~8割は朝鮮人」と推計していた自説を訂正しました。

秦氏はほかにも、「戦地慰安所の生活条件は平時の遊郭と同じレベルだった」「慰安婦の95%以上が故郷に生還した」「軍を含む官憲の組織的な『強制連行』はなかった」「元慰安婦たちへの生活援護は、他の戦争犠牲者より手厚い」などの事実が調査で確認されたと発表しました。

20年近くも前にこうした指摘がなされていたのに、なぜマスメディアにも政治にもこの数字は顧みられなかったのか。

この発表を大きく報じたのは産経新聞くらいで、発行部数は朝日新聞の約4分の1という情報量の圧倒的な差もあったのかも知れませんが、それ以上に、慰安婦問題について、謝罪や補償のあり方などをめぐる政治的議論ばかりが先行し、事実の究明がなおざりにされてきたということではないかと思います。

当時雑誌『正論』の編集者だった私は、大部数の新聞や地上波のテレビが、こうした問題をいかに先入観や固定観念(東京裁判史観)でとらえているか、いかにそこから踏み出さないかを歯がゆく思いながらそれに抗う雑誌づくりに励みましたが、こんにち海外の慰安婦像のニュースを見るたびに、気分は「日暮れて道遠し」です。

それでも「諦めない限り敗北はない」と信じて匍匐前進を…。

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