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30代世帯の純貯蓄はマイナス735万円…米国を下回った日本の世帯貯蓄率の背景=吉田繁治

2000年代の財政赤字の原因は、退職世代に増加によって増えた社会保障費

【生産年齢人口の減少は、24年も前からだった】

日本は、1995年に生産年齢人口(15歳~64歳)が、8,716万人でピークを迎え、その後は、減少する時代になりました。

2016年には7,656万人へと1,060万人減っています(内閣府)。働く世代は、1年の平均で50万人減っています。生産年齢の人口が減った分、自然に、65歳になっていく人口は増えます。

この人口構造の変化を見れば、経済(GDP)が2%以上成長するわけがないことがわかるでしょう。GDP=1人当たり生産性×労働人口、だからです。1人当たり生産性は、1年に0.5%から1%しか上がっていないからです。

(注)働く世代の減少を補うAIの利用が、進み始める2025年ころまでは経済(GDP)の3%以上の成長は、期待できません。2030年ころから「GDP(=総所得)の増加より、1人当たりの所得が増える時代」に向かうでしょう。ただしAIの利用では、職を失ったひとが、別の職に移動する期間の、生産性の低下が必要です。なおAIは、増える医療での生産性を上げる効果をもちます。たとえば、画像診断や診療でAIを使うと、医療の生産性が上がります。AIをみていると、人類は、困難と思われることを克服する技術を準備することもわかります。

【公共投資は半減されたが、社会保障費が増えた】

2000年代からは(小泉内閣の構造改革)、40兆円の公共投資は20兆円レベルに削減され、公共投資が多かった地方の建設・土木の不況をもたらしました。20兆円の公共事業(建築・土木需要)が減ったのですから、公共投資が多かった地方が不況になるのは当然でしょう。

代わりに増えたのは、
(1)社会保障費を使う(受給する)、65歳以上の人口の増加と、企業の利益の減少によって、個人所得税、法人税が減ったことが重なったことからの、
(2)社会保障費の赤字(1年に30兆円から35兆円)です。

【所得税の低下原因】

個人の所得税が減った理由は、生産年齢人口(働く人)が減ったことから、世帯所得が1995年を頂点に減ってきたからです。

世帯所得の減少とともに、1995年までは高かった日本の世帯の貯蓄率は、信じられないことですが、米国を下回ったのです。(1995年10.1%→2007年3.3%→2017年2.5%)。

このため、財投債(国債と同じ)を買っていた郵貯と国債を買っていた郵貯と銀行預金は、増えなくなっていきました。

ところが社会保障費の赤字から、国債の増発は続いたのです。

【1998年から、日銀による国債の買いが始まった】

金融機関が買えない分(当時は10兆円~20兆円:現在は30兆円)を、日銀が買うしかなくなったのは1998年からです。

日銀が買わないと、国債の金利が上がって、財政赤字のため増加発行をつづけなければならない国債価格が、売れる価格になるまで下がるからです。日銀の国債買いは、わが国の資産バブル崩壊後の金融危機だった1998年から始まっています。

2019年6月の日銀の国債所有額は481兆円であり、普通国債の約50%です。中央銀行が、戦時国債以外の国債の半分をもつ国は、日本だけです。

【法人税の減少】

法人税が減ったのは、名目GDPの成長がなく企業の利益が減少したからです。名目GDPは、商品を生産する企業の付加価値額に一致します。これがふえなくなると、260万社の合計での企業利益は、当然に減少します。

所得税と法人税収の減少と、65歳以上の人口がふえたことによる社会保障費の増加が、2000円年代の財政赤字であり、国債の増発の原因になって残高が1,000兆円規模になったのです。

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