米国の企業文化(企業の行動様式)のなかで…
企業文化の面での原因は、株を買うヘッジファンドが促した株主ガバナンスの強さから、株価の上昇がCEOの義務になったことがあります。
日本では、米国よりはるかに、企業経営に対する株主のガバナンス(経営への支配)は弱い。株主ガバナンスとは、株式投資に対する高い配当と、株価上昇の要求です。
ただし経済紙は、その論説で、日本企業にも株主ガバナンスの強化を要求しています。社外取締役増加に要請も、その一環です。
米国の、リーマン危機のあとの、商品物価ではなく、株価と不動産のインフレを生んだ資金循環(増発されたお金の流れ)は重要です。米国に特有といえるものです。増発マネーの効果は、それぞれの国の企業文化と価値観でちがいます。
日本・欧州では、米国風の資金循環(お金の流れ)は、起こりません。同じ資本主義といっても、マネーに対する伝統文化が混じる企業行動様式には、違いがあります。
(注)日本の自社株買いは、増えたとはいっても年7兆円レベルです。
米国では、株のオプション権を簿外報酬としてもらうCEOが、強欲化したのです。オプション権とは、上がった株を一定価格で買う権利です。100ドルで買う権利を100万株貰っていれば、株価が220ドルに上がっても、100ドルで買えるので、120ドル×100万株=1.2億ドル(132億円)の、個人所得になります。
この個人所得は、会社のオプション料以外は人件費にはならない。オプション権の増加が、自社株買いが4兆ドル(440兆円)にまでふえた(増え過ぎた)、主な理由です。米国では、CEOの所得は数十億円から数百億円です。カルロス・ゴーン氏が、不正までして所得を増やした原因がこれです。数億円の年収では、我慢ができなかったからです。
【健康だった、アメリカ資本主義の時代】
ヘンリー・フォードは、世界で最初に標準デザインのT型フォードを量産したとき、従業員の給料を上げています。自動車を量産するには、それを買える人が増えなければならない。そのために、社員の給料を他社よりはるかに高くする。
自分たちが作った車を、社員が買えるようにするためであると書いています(『藁のハンドル』)。110年前です。米国の資本主義は、オプション株を含むデリバティブ開発以降の金融工学化(1980年代~)で、変質してしまっています。オプション権を買うオプション料を決めるのが、公式化さていて誰でも計算ができる、ブラックショールズ方程式です。
【過去のボラティリティの延長という間違い】
ブラックショールズ方程式は、標準偏差よる確率的な未来を示すものです。20日間の過去の標準偏差をそれから先1年に延長するという、本質的な欠陥をもっています。神ではない人間にとっては過去(記憶)しかないからです。
明日になっても、明日はまた明日です。明日は変化するというのが未来の本質です。その証拠に、標準偏差の2倍で、2.5%の確率を短期計算するボラティリティ(価格変動の確率)は、毎秒変化しています。
【数学的なこと】
この確率的な未来は、確率的にもっとも出現率の高い平均を出す指数平滑による計算として、オプションと同じ構造の先物の短期売買のシステムトレードに応用してはいますが…統計学は、いろいろな平均の計算法の学でしょう。
標準偏差は、過去の数値の変動幅の平均です。マネー運用のプログラムを作るクオンツが使う統計学とデリバティブ(=オプション料)の、ファイナンスの関係は深くなっています。
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※太字はMONEY VOICE編集部による
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