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30代世帯の純貯蓄はマイナス735万円…米国を下回った日本の世帯貯蓄率の背景=吉田繁治

1990年代の財政赤字(400兆円)の原因

1990年代までは、米国が日本経済の構造改革として要求した公共事業費1年40兆円が、財政赤字の主因でした。この赤字が、10年間で約400兆円の国債の発行になって、いまも残っています。

【構造協議開催よる米国の要求】

日本の貿易黒字(=米国の貿易赤字)の原因は、日本が貯蓄額以上には、国内投資をしていないからである。米国は、「構造協議」を開催し、対米貿易黒字を減らすための内需拡大策として、1年に40兆円の公共投資を要求したのです。

日本政府はこれに応じ、国債を増発して、10年間で400兆円(40兆円/年)の公共投資を行ったのです。官庁の建物、高速道路、ダム、橋、河川整備、港湾整備、森林整備…などです。

リフレ派の政府系エコノミストは、国債という負債の裏に、政府が管理(専有)する公共資産があるから、資産を引けば、実質的な政府の負債は少ないと、政府のB/Sを作って、今も、主張しています。

専有と所有という概念は、違うものです。専有は管理、所有は自分のものとしてもつことです。公共資産は、政府が専有するものであっても、所有するものではない。公共資産は、税を払う国民が所有しているものです。

これらの公共投資は、帳簿上では名目的な資産として見なすことはできても、民間に売って換金できるものではない。政府間で売っても、政府のマネー増加にはならない。森友学園に対して行った、国有地払い下げのように、民間に売らなければマネーにはならない。

一体誰が、公共投資で整備された河川、港湾、橋、高速道路、森林を買うでしょうか。国会や、官庁の建物、設備、美術館、博物館も買う人がいるかどうか。

不動産会社は買いません。官庁の建物を買っても、政府にリースしなければならないからです。

換金できない資産は、会計上、負債と相殺できる有効な資産ではありません。企業が、「買い手がなく売れない土地」を所有していても、銀行が「担保価値があると見る有効な資産」でないのと同じです。公共投資の不動産は買うことの意味がない「月や火星の土地」と同じです。

【中国への米国の要求】

現在、トランプ政権は、中国輸入に対して関税をかけ、対中貿易赤字を減らそうとしています(3,752億ドル:41兆円:世界に対する米国の貿易赤字の50%)。これも90年代の日本に対して要求した「構造協議」とおなじ筋のものです。米国は勝手な国家です。

日本は、公共事業は官僚の権益になるので、進んで財政赤字を拡大し、国債発行して10年間で400兆円を使いました。400兆円の国債として残っています。国債の返済は1円もなく、借り換えていて(手形の期日を伸ばすジャンプともいう)、現在の負担になっています。

一方では、年40兆円の公共事業が、資産バブル崩壊のあとの、90年代のGDPの減少をとめていたのです。

Next: 2000年代に入って増加した財政赤字の原因は…

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