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30代世帯の純貯蓄はマイナス735万円…米国を下回った日本の世帯貯蓄率の背景=吉田繁治

MMT(現代貨幣論)の財政モデルは、異次元緩和を行った日本だった

日本は、世界のなかで、もっともGDP比の累積財政赤字が大きい。
()内は世界の順位です。

▼世界のGDP比の累積財政赤字(=政府の負債)
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(1)日本 GDP比 237%(長期金利マイナス0.13%)
(2)ギリシア 183%(2010年に破産:当時の金利30%:現在3.4%)
(3)ベネズエラ 175%(ハイパーインフレ:81万%)
(6)イタリア 132%(2011年の長期金利7%:現在は2.29%)
(11)シンガポール 108%(長期金利2.09%)
(12)米国 106%(長期金利2.077%)
(18)フランス 98%(長期金利0.108%)
(29)英国 86%(長期金利0.853%)

※出典:世界の政府債務残高対GDP比 国別ランキング・推移
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(注)各国政府の債務は、その内容をみると一律には順位をつけて比較することができない性格ももっています。

【米国と中国についての注記】

(1)米国は、政府負債GDP比106%と、日本より少ない代わりに、海外が米国に貸しつけたことになる対外負債が36兆ドル(名目GDP比163%:3,960兆円)と大きい

(2)中国は、政府負債がGDP比54%と少ない代わりに、政府に代わって住宅投資、設備投資を行ってきた企業部門の、国有銀行からの負債が、GDP比184%と大きい(18年3月)。中国では、連結で見なければならない国有企業が、共産党政府の代わりに、GDP比110%(企業負債の60%)の負債を抱えてきたからです。政府紙幣を発行している共産主義では、たとえば、携帯電話のファーウェイに対する政府の支配に見るように、全部門も政府とみてもいいものです。

負債の大きな中国企業の破産と、企業の不良債務の少なさの理由は、国有銀行が、不足した政府紙幣を貸し付けているからです。

(3)米国、中国とも、ほんとうは、日本と同じレベルの政府負債が、実質的にはあるとみなければならない。

米国の36兆ドルの対外負債は、FRBが発行したドルベースの負債だからです(海外からの米国債の買い、米国企業の株の買い、社債の買い、証券化商品の買い)。

(注)日本は、政府管理の金融資産を引いた純負債でもGDP比153%で世界1位です。イタリアは120%、ポルトガルは108%、フランスは87%、米国は80%、英国は77%です。
※参考:世界の政府純債務残高対GDP比 国別ランキング・推移

【政府紙幣】

政府紙幣とは、政府が財政支出のとき、国債の代わりに発行するものです。日本では、明治初期の、米価3倍のインフレを起こした太政官札が政府紙幣でした。

江戸時代の、改鋳されて量が増えていた小判も、紙幣ではない政府貨幣です。政府紙幣は、税収以上の財政支出になって、必ずインフレを起こしていました。

19世紀からは中央銀行を作って、政府は金融機関に売る国債を発行するようにして、(1)紙幣は中央銀行が、(2)預金通貨は貸付金を増やす能力をもつ銀行が発行するように、変わってきたのです。

中央銀行は、通貨量と金利の調節を行い、通貨の価値(商品の購買力)を下げるインフレを起こさないことが、公的なミッションでした。

数年の準備を経てやおら登場した「現代貨幣論」は、政府と中央銀行を連結して統合政府とすることよって、財政支出に政府紙幣を使うということを主張するものです。

政府紙幣なら、国債とは違い、満期の返済と、毎年の利払いがない。政府が財政赤字(支出-税収)を増やしても、支出は政府紙幣で決済できるから、政府が破産(デフォルト)に陥ることはない主張しています。

じつは、リフレ派のエコノミストにも、政府紙幣の発行を要請するがひとたちが混じっていました。現代貨幣論は、理論的な装いをとって政府紙幣を根拠づけたのです。

(注)現代貨幣論の前は、中央銀行が国債を買うことは、国債を現金化する「マネタイゼーション」であり禁止事項だと言われていました。

Next: 政府紙幣の発行が有効なら、無税国家も誕生できる…

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