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30代世帯の純貯蓄はマイナス735万円…米国を下回った日本の世帯貯蓄率の背景=吉田繁治

【厚生年金の平均額】

厚生年金の対象者の、2018年の平均支給額は夫婦2人で平均21万円/月です。国民年金(基礎年金ともいう)の夫婦は、1か月13万円です。2人の厚生年金は、「基礎年金(13万円)+厚生年金(約8万円)」です。これは、平均の支給額です。

現役時代の所得が高かった人(=所得大に対しし一定率の保険料を多くおさめた人)と、共済年金がプラスされる公務員は、1人が平均20万円(年間240万円)くらいです。

共稼ぎのときは、夫婦2人で、平均が月30万円(年間360万円)です。月30万円の年金の公務員なら、確かに「100年の生活安心」になるでしょうか。

【2000年代からの、財政赤字の原因は、増えた社会保障費】

年金(56.7兆円支給)、医療費(39.2兆円)、介護費他(25.3兆円)、合計では121.3兆円にふくらんだ社会保障費での、
・保険料ではまかなえない赤字(46.7兆円:お金の不足)が、
・国債と地方債発行の主因になっています。

◎政府の赤字財政が持続可能かどうかの問題は、65歳以上の人口増加から、支給額が同じなら1年に3%(約3.6兆円)は増えていく社会保障費をどうするかに、かかっています。

◎財政赤字の継続が、長期間、可能であること、言いかえれば国債の増発がどこまでもできるということがない限り、いまの「社会保障制度」も安心ではない

【65歳以上の人口】

年金、医療費、介護費の対象者になる65歳以上は、2016年で3,459万人です。同年の総人口1億2,683万人での構成比は、27.3%でした。

21年後の2040年には、65歳以上の人口は、3,901万人へと442万人増加します。年間で18万人増えることは、確実です。人口は確定した未来です。(国立社会保障・人口問題研究所:2017年推計)

65歳以上が増えるなかで、総人口は、2040年には1億1,003万人へと、1,680万人も減ります。1年間で「1680÷24年=70万人平均」で減って行きます。

【生産年齢人口の減少は続く】

総人口のうち、社会保険料を支払う現役世代が多い生産年齢人口(15歳~64歳)は、2016年では7,648万人です。2040年には5,978万人へと、1,670万人も減ります。減少は毎年平均69万人です。総人口の減りかたより、生産年齢人口の減少のほうが多い。

2040年では、総人口1億1,003万人に対する65歳以上の構成比は、35%に上がります。文章で読んだだけでは、ごちゃごちゃになっているかもしれません。表にします。

           2016年    2040年    増減
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・65歳以上の人口   3,459万人   3,901万人  +442万人
・生産年齢人口    7,648万人   ,5978万人 -1,670万人
・総人口     1億2,683万人  1億1,003万人 -1,680万人
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

以上のように、日本の人口問題とは、生産年齢人口の大きな減少(年間70万人)であることがわかるでしょう。この世代は、働いて年金・医療保険を払っていて、まだ受け取らないひとたちです。

一方で、年金・医療保険を、払った累積額以上に大きく受けとる65歳以上は増えるのです。

65歳以上の世代が受け取っている年金・医療費・介護費のうち約30%が、政府の財政赤字(33.6兆円)になり、国債の増発になっています。

再確認すると、政府が「年金制度は100年安心」という理由は、3つです。
(1)社会保障費の30%の国債を、金利を上げることなく、増加発行し続けることができること(2018年は+33.6兆円)
(2)「マクロ経済スライド」という減額の方法により、年金の支給額額を、現役時代の平均の約50%を超えないように抑えること(つまり所得代替率50%)
(3)政府は財政赤字の国債発行を、いつまでの可能としていること。

意味が分かりにくい「マクロ経済スライド」は、
・物価と賃金の上昇があっても、年金はその分は増やさず、
・年金を受け取る平均余命の、伸び率の分を減額して(年0.3%の減額で固定)、わずかしか増やさないという方法です。

【2019年度支給年金のマクロ経済スライド】

具体的にいうと、2018年では消費者物価は1%上がり、働く人の名目手取り賃金の総平均は、0.6%上がっています(実質所得は-0.4%です)。

これに対して、年金額の改定は+0.1%でした(2019年度支給分)。物価上昇を引いた実質では、2018年に対して0.9%下がったことになります。これは、4年ぶりの改定でした。

なお物価が1%下がるときは、年金は1%減らされます(実質額は同じです)。

「社会保障制度は100年安心」ということの本質にあるもの

政府からは安心とされている社会保障制度の、財政での問題は、
・中央政府の、財政赤字の分(2018年は33.6兆円)、国債を増加させつづけても、
・金利が3%に上がるときはないかという問題です。

つまり金利が、「社会保障制度への安心」の、本質的な課題になるものです。国債問題の本質は、金利です。

2018年12月で1,304兆円の政府部門の負債があるわが国では、試算すると、(うち国債・地方債は1,096兆円)
・金利が2.5%から、財政支払いの危機に向かい、
・3%になると、価格が下がる国債の発行難が起こって、財政予算の100%支払いができないというデフォルトになるからです。

国債の増加発行ができないと、121兆円の社会保障費も、70%しか払えなくなります。30%は未払い、または時期を決めない延べ払いになるのです。これをデフォルトといいます。

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