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韓国輸出規制、国際世論は「日本が悪者」。安全保障を言い訳にしていると批判殺到=高島康司

「ブルームバーグ」の社説

最初は大手経済紙「ブルームバーグ」が7月22日に掲載した社説だ。

21日投開票の参院選で勝利した安倍晋三首相は多くを成し遂げる政治的影響力を得たわけだが、まずやらねばならないのは、隣国の韓国に対して始めたばかげた貿易戦争をやめることだろう。

安倍政権は今月、半導体生産に不可欠な3つの材料の対韓輸出規制を強化した。日本の当局者はハイテク関連の輸出品が北朝鮮などに不法に渡らないようにする措置だと主張するが、元徴用工を巡り日本企業に損害賠償の支払いを命じた韓国大法院(最高裁)の判決への報復を意図したものであるのは明らかだ。<中略>

悪影響は安倍首相の評判悪化どころでは済まない可能性がある。日本のサプライヤーは市場シェアを落とし、信頼性でも評判を落とすだろう。韓国は「ホワイト国」リストから除外されれば、間違いなく報復しようとするだろう。既に日本製品の不買運動は広がり、高まる緊張は安全保障関係を損ねるリスクがある。対立は、トランプ政権との関係も不必要に複雑にする恐れがある。

明らかな妥協策は、日本側が輸出規制強化をやめ、追加措置の実行も我慢するというものだ。韓国は元徴用工問題で仲裁委員会の設置に応じる必要がある。今回の争いを始め、選挙で無事勝利した安倍首相がまず行動すべきだろう。そして韓国大統領が速やかに報いるよう、米国は保証しなければならない。

そして日韓両国は、歴史上の紛争に対するもっと創造的な解決策を模索するべくコミットすべきだ。深いわだかまりが簡単になくなると考える者はいない。それでも、文大統領も安倍首相も自らの責務は緊張を高めるのではなく、和らげることにあるのだと自覚する必要がある。

出典:安倍晋三首相が韓国と始めた希望なき貿易戦争ー社説 – Bloomberg(2019年7月22日配信)

以上である。今回の安倍政権の動きを日本が標榜している自由貿易の原則に違反するものだとして、安倍政権に即刻方針転換するように要求している

「ニューヨークタイムズ」の記事

次に、米大手紙「ニューヨークタイムズ」が7月15日に掲載した記事だ。「ブルームバーグ」ほど激しい口調ではないものの、やはり日本は戦後の自由貿易体制のルールに違反しているとして、日本の動きを批判している。

先月、安倍首相は世界のリーダーが居並ぶG20の席上で、トランプ政権が損なっているグローバルな自由貿易を世界の繁栄と平和の基礎だと強く擁護した。

しかし2日後、韓国のIT産業を狙い撃ちにした日本製化学薬品の輸出規制で、自由貿易に打撃を与えた。その理由は、アメリカやロシアが口実として使う、漠然としていてはっきりとしない安全保障上の考慮だ。

自由貿易体制のもとでは、こうした口実は各国間の争いがコントロールできなくなることを恐れ、各国の指導者はこれを使うことを避けてきた。もしこの口実が1カ国や2カ国えはなく、10カ国や15カ国が頻繁に使うようになると、自由貿易体制は根本的に破壊されるかもしれない。

日本の当局によると、韓国は軍事物資として潜在的に使用可能な戦略物資である化学薬品を韓国の企業が適切に管理できなかったとしているが、企業名も管理不備の実態は明らかにしていない。

しかし韓国は、これが戦前の徴用工問題に対する報復として見ている。安倍はトランプと同じように貿易をこん棒に変えようとしていると見ている。これは、他国を脅かすために関係のない問題を持ち出す行為だ。歴史問題に対する日本の抗議には合理的な面もあるが、貿易問題にするべきではない

韓国は国連に調査を要請した。もし韓国に不正が見つからなければ、日本は輸出規制を即座に撤廃すべきだとしている。日本は自由貿易の原則を侵犯しているというのだ。

戦後、大恐慌の後の保護貿易を反省し、世界経済は自由貿易体制になった。この体制のルールには、安全保障という例外規定が始めからあったものの、どの国もこれを保護貿易の口実として使うことは避けてきた。自由貿易体制が損なわれる可能性があったからだ。

※出典:Japan Cites ‘National Security’ in Free Trade Crackdown. Sound Familiar? – The New York Times(2019年7月16日配信)

以上である。このように、今回の日本の動きが戦後の世界を支えていた自由貿易の原則を踏みにじるものだとする見方は海外メディアにはとても多い。

Next: 歴史問題に踏み込んで安倍政権を批判する海外メディアも

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