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韓国輸出規制、国際世論は「日本が悪者」。安全保障を言い訳にしていると批判殺到=高島康司

「フォーリンポリシー」の記事

最後に著名な外交誌「フォーリンポリシー」誌の記事を紹介する。これは今回の問題の原因が戦前の戦争犯罪に無反省は安倍政権にあるとして、歴史問題に切り込んでいる。

中国や北朝鮮ではなく、東アジアにおけるアメリカの同盟国の日本と韓国が対立している。7月1日、日本はIT産業には不可欠な化学製品の韓国への輸出規制を導入した。これが長引けば、両国の経済関係を損なうだけではなく、ちょうど5Gの導入が進む時期に、IT機器の世界的な生産に甚大な影響を与えることになる。

7月1日、日本は半導体やフラット・スクリーンなどのIT機器の生産には不可欠な化学薬品の輸出規制を韓国に適用した。これに対して韓国は強く反発し、文在寅大統領は50年間の両国の経済関係を傷つけるものだとした。「WTO」に日本の自由貿易のルールの侵犯を訴えた

日本は、韓国は軍事使用が可能な輸入化学薬品の適切な管理を怠り、安全保障上の懸念を生じさせたとしている。韓国が北朝鮮へ横流しした可能性も示唆している。だが、日本のこうした非難には具体的な証拠が示されていない。アメリカが仲介に乗り気でないとき、両国の関係がどうなるのかとても気になるところだ。

これは公式には安全保障の問題であると日本は言っているが、実はそうではないことは明白だ。問題の発端は、韓国の最高裁である大法院が戦前の徴用工の補償を認めたことにある。元徴用工は日本製鋼や三菱重工に対して補償を要求したが、拒否された。これに苛立った安倍首相は経済的に報復するとしていた

安倍首相は、戦前の売春宿で女性を強制労働させた問題に対して謝罪する気もないし、反省もしていない。これは公式には2015年には解決している。また安倍首相は、中国や韓国からの強い抗議にもかかわらず、何人もの戦争犯罪人を祭っている神社に繰り返し奉納している。中国と韓国は、安倍首相は戦前の戦争犯罪を反省していないと抗議している

最近では日韓は、韓国軍の艦艇が日本の哨戒機をレーザー照射した件で対立した。日本はレーザー照射に抗議し、韓国は日本の哨戒機が不適切な挑発を行ったからだとしている。

日本は韓国の対応に疲労している。韓国は中国と距離を縮め、アメリカや日本との同盟から距離をおく方向に動いていると日本は見ている。

この輸出規制の影響は大きい。いま韓国のIT産業は1カ月程度の在庫があるため影響は出ていないが、輸出規制が長引くと、IT産業全体の発展を阻害するだろう。また、もし日本が韓国を優先的待遇のホワイトリストから外すなら、日本の輸出規制の影響は広い範囲の製品に及ぶことだろう。日本は、安全保障の懸念という口実の言語道断の悪用によって、自由貿易体制を危機に陥れている

トランプ政権は、アルミから鉄鋼、そして乗用車などに対しても、「安全保障上の懸念」を口実に貿易規制を適用している。アメリカは自国のみが「安全保障」の内容を決定できないとしているが、これに対して「WTO」が反論している。トランプ政権が安全保障を口実に同盟国、非同盟国にかかわりなく課している高関税は、パンドラの箱を空け、自由貿易体制を引き裂くかもしれない。

日本と韓国のケースはこれから「WTO」に持ち込まれる。しかし、「WTO」が結論を出すには1年以上かかるかもしれない。一方トランプ政権は、日韓両国の仲裁には関心がない。両国の関係は損なわれるだろう。

※出典:Why Are Japan and South Korea in a Trade Fight? – Foreign Policy(2019年7月15日配信)

以上である。これは安倍政権が、戦前の戦争犯罪という歴史問題に、自由貿易の原則に違反した輸出規制で対応したとして日本を批判した記事だ。こうした論調の記事も非常に多いのである。

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