ECB新総裁にラガルド女史が務まるだろうか
彼女は長期間IMFの専務理事を立派に務めてきた。法律家出身である。
この点ではパウエルFRB議長と同じである。彼女がユーロ圏の経済政策の総本山とも言えるECB総裁が務まるだろうかという懸念が一部にあるそうだ。
この点ではリチャード・クーの言うバランスシート不況や「現代経済理論がやり残したもう半分、The Other Half」を考えると、なまじ経済理論に染まってきた人よりは有利な面もあるのかもしれない。
上記の3行はリチャード・クーの言い分である。
次に筆者の言い分。実質金利さえ下げれば借り手は必ず現れるという、これまでの経済学は、今は全く使い物にならない。ラガルド女史は従来型経済学に染まっていないことは、逆にメリットであるかもしれない。日本ではバブル崩壊から29年を経た。欧米ではバブル発生から11年を経た。その根本的局面変化を理解できず、間違った政策を提案するエコノミストたちは従来型経済学が通用しない現代においては大いにマイナスである。
ラガルド女史はそれに染まっていないだけ有利である、というのはリチャード・クーの見方でもある。パウエルFRB議長とラガルドIMF新総裁とは法律家出身ということにおいて同類である。
世界景気後退と円高
世界景気が後退しトランプが米国の輸出産業の支持をとりつけるためにはドル安に導く必要がある。そのような状態になれば円高となり、その趨勢が1ドル100円ぐらいにまで上がっても不思議はない。現にレーガン元大統領は5ヶ国(お目出度いことに日本も加わっていた)で悪巧みを企ててプラザホテルに集まり、悪巧みを企んだ米国以外の4ヶ国も一斉に協調した。そして240円の円が10年後に79円までもっていかれた。そのような極端なことはなかろうが、100円ぐらいまでは世界景気の後退感や米国景気の後退が明らかになれば、利下げの反復を行い、ドル安円高を招くことがないとは言えない。
ドル安円高になることは充分にあり得る。いくらまで円高ということは今のところははっきり言えないが、100円ぐらいは充分にあり得ると思う。
「円は安全資産だから各国の余剰資金は円に集まる→円高になるという動き」に対して、ジム・ロジャースは反対の意見を言っている。彼は来日して日経ヴェリタス誌のインタビューに応じた。要約すれば次のような意味のことである。
「長期的には円の価値は大きく下がる。円に対する見方は良く誤解されている。世界の歴史において財政に問題を抱えている国の通貨は全て値下がりしている。だから円安傾向である。私は東日本大震災の直前から日本株を買ってきたが、昨年秋(筆者註:アベノミクス大天井は10月2日)に全てを売却した」と言っている(日経ヴェリタス紙、9月22日号)。
105-115円のレンジ相場を維持している。仮に円高に振れても、100円水準は大きな節目に。