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景気後退不安を前に、世界債務はリーマン・ショックへ導いた「ジャンク債の宴」の2倍=山崎和邦

「円高=株安」という見方に変化が生じても良い頃だ

「円高=株安」は輸出面のみに目を向けた見方である。輸出立国の日本であるし経済成長が著しかった時代は輸出が強かった時代と合致するから無理もない。しかし、GDPを構成する4要素の中の輸出ではあるが、これは輸入と裏腹の問題である。円高は家計に大きなメリットを与える。輸入品が安くなり海外旅行もしやすくなり国民の実質所得が増えることになる。「円高=株安」はもっぱら輸出企業の立場の見方に偏っている。

輸入企業は円高によって利益が大きく出る。したがって、自動的に売上利益が伸びる。円安による利益は、トヨタが1円について売り上げ利益が400億円増えるという。輸入業者になれば、円高によって利益が増すことになる。輸入有利の分を値引きして販売量を増やす方法もあるし、顧客にサービスする方法もある。価格を据え置いて実質的に利益を増やす方法もある。

円高が不利だという考え方は「国内でつくって海外に輸出する」ということをもっぱらにしている立場である。「海外でつくって海外から世界に供給する」というやり方ならば、円高でも円安でも中立的である。今の日本企業は海外で生産して海外に売るという企業が多い。特に大企業がそうである。筆者が長年取締役を務めていた会社では構造体は100%が輸入であった。プラザ合意の猛烈な円高突入の頃、財界での顔を気にして社長が円高を顧客に還元しよう、しようと、取締役会で盛んに主張して大いに迷惑した。

筆者の担当支店ではあまり社長が円高還元を主張するから止む無く、200万円値引きするということにして定価200万円の輸入品を、原価80万円ぐらいを顧客に輸入原価で売って120万円を値引きしたような形をとった時代がある。

この頃、輸入部門が多い企業は円高で大いに利益を上げたのだ。円高で不利な面だけを叫び、有利なことは黙っている、これが財界のやり方だ。

「円高=株安」という硬直的な図式はそろそろ卒業したらどうだろうか。

現に、80年後半から90年にかけて猛烈な円高が進行したが株式は猛烈に上がった。この時は「円高は強い日本の表れだ。強い国の株は高いのだ」ということが市場のコンセンサスになっていた。市場を流れる「感情」は「勘定」を超越して強烈に働いた。今は「円安=株高」「円高=株安」の図式に偏り過ぎている。このことを筆者が述べた以上のことをいつか市場が気が付く時代が来るであろう。

30年前に筆者が感じていた日本への不安が今、ジム・ロジャースが「日本への警告」で述べられている。

Next: 10月から始まった消費税をめぐっては、2つの対立する考え方がある

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