消費税について考える
経済学者の間では消費税を支持する声が以前から高かった。所得に課税するよりも支出に課税した方が効率的で簡素になるからだ。
しかし、ここに2つの見方がある。米ハーバード大学教授ケネス・ロゴフ氏によれば、高所得者ほど負担が多くなる累進的な消費税を確立せよというのだ。米国の上位7.5万所帯を対象とする超富裕層に消費税の増税を提案している。
一方、ハーバード大学サマーズ教授(元米財務長官)は、このような見通しは甘すぎるという考え方。法人税率を引き上げるとか富裕層の課税逃れを封じるとか、伝統的な策を幅広く講じた方が格差縮小につながると主張した。
どちらも格差縮小を訴えている点で立場は同じである。
中長期の見方:アメリカ景気後退の兆候
逆イールド現象(短期金利>長期金利)が起きると、過去の例で言えば、いつも12ヶ月から20ヶ月後に景気後退に必ず陥っている。
無理もない。この現象が起きれば短期金利で金を集めて企業に長期金利で金を貸してその利鞘をとるという銀行がメインとするビジネスモデルを破壊するからだ。今回、米国では昨年の12月と今年の3月と8月14日と3回の逆イールド現象が起こった。
逆イールド現象というのは、期間を置いて何回か訪れるものだ。その後に景気後退が訪れる。資本主義経済体制のカネの流れに支障をきたすからである。
背景は全く違うが、日本は1990年から2003年まで続いた「失われた13年」は不良債権山積みで銀行の機能が停滞した。逆イールド現象が起きる背景には、原因は違うが銀行の機能が停滞する背景は同じである。景気後退に陥る背景となる。
米の政策金利は2~2.25%であって、これはリーマン・ショックの時と同水準である。
米企業のレバレッジ総額はリーマン・ショック前の2倍近くに膨れ上がっている。世界の債務は2京円(2,000兆円の10倍)にのぼっている。リーマン・ショック寸前の2倍以上である。
日本の景気は経済成長を1.3%から0.9%に修正し、来年は1.2%としているが、いずれも民間調査機関の予測平均は0.5%であるから、これに比べて政府発表ははるかに楽観的すぎる。
日経新聞が100人の企業会長・社長に3カ月おきに実施するアンケートでは今回8月28日・9日に実施したものによると、41%が「世界景気は悪化する」と回答している。理由は米中摩擦と中国景気悪化が主因。
このアンケートは、一般の総研の推測よりも的中率が高い。「41%が悪化」と言うのは、アベノミクス始動以来、初めてのことだ。
本稿が年初から経過感を示し、今年最大の注目点はアメリカ景気と世界景気の悪化という観点だろうと警戒してきたことは今になって話題に上ってきた。