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「トランプの独断」は嘘? 日本では報道されないイラン情勢の真実と次なる標的=高島康司

失敗した政権転覆とイランの体制転換

もし今回のソレイマニ司令官の殺害でイラン攻撃が始まるとすれば、それは気まぐれなトランプの後先考えない決定が原因ではなく、事前に存在してい計画を実行したことになる。

それではなぜいまの時期に、こうした計画が実行されたのだろうか?

上のアラスティア・クルックの記事によると、イスラエルの関係筋の情報として、それはイランの体制転換の計画が失敗したからだという。

イスラエルはかなり以前からイランの体制転換を計画し、そのための要員を養成し訓練していた。このいわば体制転換のためのクーデターは、今年の春ころに実行される予定だった。

しかし昨年の11月、イラン政府がガソリン価格を2倍に引き上げたことに反発して、イラン全土で広範囲の抗議運動が起こった。イランでは2009年以来何度か激しい抗議運動が起こっているが、それはテヘランなどの大都市圏の中間層に限定され、地方の抵所得層はむしろイランの現体制を支持していた。

ところが今回は、地方の低所得層を含めた全国的な抗議運動に拡大した。これをイランの体制転換を実現する絶好の機会と捉えたイスラエルは、計画を前倒しして、準備が十分に整わないまま、体制転換のための行動を開始した。抗議運動の暴力化を扇動し、それを利用して全国的に反政府運動を拡大させる計画だった。

しかし、計算通りには進まなかった。ガソリン価格の上昇への抗議として始まった運動は、基本的の平和的なものであり、暴力化することなく、11月中には終結する方向に向かった。

体制転換を目的に活動していたイスラエルは、いわば梯子を外された格好になった。その結果、自分たちだけで体制転換の反政府運動を引き起こそうと、一か八かの破壊的な賭けに出た。

しかし、平和的なデモの後に始まった新たな暴力的な反政府運動はイラン治安部隊の標的となり、徹底して鎮圧され、大勢の死傷者が出た。イスラエルが計画したイランの体制転換は完全に失敗した。

「アメリカーイスラエル安全保障条約」がテコ

これが、調査ジャーナリストのアラスティア・クルックや、ブラジルの著名なジャーナリスト、ペペ・エスコバルなどの人々がイスラエルの関係筋から得た情報として紹介しているものである。

そして、この計画が失敗したイスラエルは、「アメリカーイスラエル安全保障条約」の締結をテコにして、アメリカを引き込んでイランと戦争状態になり、イランの本格的な体制転換を実施するという方向に転換した。

すでに前述のアラスティア・クルックの記事が出た12月9日の段階で、ネタニヤフ首相側近の関係筋の話として、今後半年以内に戦争が始まるとしていた。その後に掲載されたアラスティア・クルックとペペ・エスコバルの対談では、イラン戦争が迫っている可能性が高いとしていた。

だが、イランとの戦争が始まれば、かつてのイラク侵略戦争以上の泥沼になる可能性は大きい。

しかし、「アメリカーイスラエル安全保障条約」を推進しているイスラエルと米国防総省の強硬派は、そのようには考えてはいない。イラン国内にある8カ所の核関連施設、及び軍事施設を、地下まで届く爆弾、「バンカーバスター」で攻撃すればイランは軍事的に無力化できると見ているようだ。かなり簡単に考えている。

もちろん、このように簡単にことが進むとは到底考えられないが、「アメリカーイスラエル安全保障条約」をテコにしながら戦争を始める計画は、実際に存在しているようだ。

ということでは、この条約が締結されると、イスラエルは自国の軍事施設を自作自演で攻撃し、これをイランの仕業として攻撃を始めることも考えられる。この条約の元では、アメリカも自動的にこの戦争に引き込まれる。

将来このようなことが、本当に起こるのかもしれない。

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