国益無視で私益優先へ
大統領府の秘書官関係で、約60名が次期総選挙に立候補予定者となっている。残りの「若手秘書官」にはその道も閉ざされている。
そうなると、今後も継続して大統領府勤務を確実にする手段を取らざるを得ないのだ。総選挙で与党が敗北すれば、次期大統領選でも進歩派候補は落選濃厚となり、これに伴い秘書官は失職する運命である。
こうなると、与党が次期総選挙で勝利を収める条件として、常套手段である「反日」を煽るほかない。
この延長線で、「GSOMIA破棄論」が浮かびあがったのだろう。こういう思惑が働き、国益や日米韓3ヶ国の防衛ラインへの悪影響など無視し、自らの就職の場を確保する「保身の術」で、GSOMIA破棄論が出て来たと見るべきだ。
深い考えはない。「国益」の前に「私益」が優先されている。韓国政治は、冒頭に掲げたように「後進国」の域を出ないのである。
気に食わない検察トップの部下を一掃
韓国政治の後進性はこれだけでない。次のような深刻な問題が提起されている。
韓国大統領府は、韓国検察庁の剛腕トップである尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を封じ込めるため、部下の枢要ポストの座にあった人たちを一掃してしまった。
枢要ポストの「ビッグ4」とされるソウル中央地検長、検察局長、最高検察庁反腐敗・強力部長(旧中央捜査部長)、公共捜査部長(旧公安部長)の人事が、一斉に湖南(ホナム、全羅道)出身者に変わったことだ。
これは、全州出身の青瓦台(チョンワデ、大統領府)公職紀綱秘書官が、人事を握っていることも関係あると推測されるという。
韓国の官僚人事では、「地域配分、牽制と均衡の原則」が生かされてきた。韓国の社会構造が、「宗族制」という遺風を持っており、不平等になる潜在的な危険性を抱えているからだ。
日本でいえば、明治維新後の官僚人事で、薩長が肩で風を切って歩いていた。それと同じ構図が、韓国では未だに見られるのだ。驚くべきこの政治的な後進性が、現実政治を牛耳っているのである。
「GSOMIA破棄論」は、遅れた政治土壌の中から芽を出しているのであろう。