2019年末、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が終了した。太陽光発電は普及したが、なぜかCO2排出量は減少していない。その元凶は電力会社にある。(『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』)
プロフィール:田中優(たなか ゆう)
「未来バンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表。横浜市立大学、恵泉女学園大学の非常勤講師。著書(共著含む)に『未来のあたりまえシリーズ1ー電気は自給があたりまえ オフグリッドで原発のいらない暮らしへー』(合同出版)『放射能下の日本で暮らすには?』(筑摩書房)『子どもたちの未来を創るエネルギー』『地宝論』(子どもの未来社)ほか多数。
※本記事は有料メルマガ『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』2020年1月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
環境より利益優先。電力会社の損失は一般家庭の電気代へ上乗せ…
家庭の太陽光発電「固定価格買取制度」は終了へ
2019年末に「FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)」が終了したことにより、家庭に取り付けられた太陽光発電で作った電気は、有利な固定価格で買い取ってもらえなくなった。
2009年から買い取りが始まり、家庭に設置したものなら10年間、事業者が設置したものに対しては20年間、買い取られる。
だから今回終了するのは「家庭向け」装置で、家庭の有利な買い取りは終わり始める。
買取価格は年ごとに低下したが、売り始めた年の買取価格が10年間だけ維持される。事業向けと装置が同じであっても同じだ。
つまり、まだ使えて発電していても、優遇価格で一部の会社に買い取ってもらうか、従来通りの電力会社に安い価格で買い取られるかの選択を迫られるのだ。
太陽光発電を「していない人」に負担を強いる電力会社
最低の電力会社の買取価格は「焚き減らし代」と言って、火力発電所の発電が節約された分での買取価格になる。買取制度があった時にはキロワット当たり48円で買い取られていたものが、ほぼ7〜8円に下がる。
ところが電力会社のこの買取価格は、「固定買取制度」のあるときも、電気そのものに対してはその価格でしか買い取っていなかった。高値の分を誰が負担していたのかと言えば、太陽光発電装置を付けていない人たちだった。
「再生可能エネルギー促進賦課金等」で負担させられていた。電力会社は負担しないどころか、「焚き減らし代」以外の設備強化や経費管理費用すら請求した。
だから「付けた方が得だ」と考える人以外のすべての電気代を高くして賄われたのだ。