登録品種の「許諾制」導入
種苗法改正のもう1つの問題は、登録品種の「許諾制」導入であるとされています。
登録品種を生産、増殖、販売などの目的で自家採種・自家増殖したい団体や農業者は、許諾契約(必要な場合は育成者に許諾料を支払う)によって「利用者権」が得られ、自家採種や自家増殖も可能となります。
その場合、利用者には育成者の示した利用条件を守ることが義務付けられます。
なお、登録品種の利用であっても、自家消費を目的とする家庭菜園や研究用での自家採種・自家増殖の場合、許諾は必要ありません。
これはどういうことかと言うと、自家増殖するのに「許諾料」という今までにない負担が発生するということです。
農水省によると、ある登録品種の稲の例では10aあたり3円、ブドウの苗木1本で60円という例があるそうです。野菜の種子は「F1」がほとんどのため、種子による自家増殖はそもそもできないのは前述のとおりです。
「外国資本に種子が独占されるのではないか」の懸念
種苗法の改正案には、農作物を新たに生み出した人や法人に「育成者権」を与えることが盛り込まれていることは説明しました。
ここで「人や法人」の法人です。いわゆる民間企業ですが、それは海外の事業者も含まれているのです。
新品種を育種登録するには数百万から数千万円の費用がかかるので、新しい品種の登録は大企業しかできないという側面があります。
育種権利者が都道府県から企業に代わった場合、都道府県との契約内容をそのまま企業が引き継ぐことになります。
世界のグローバル企業は、特許権、知的財産権でお金を儲けることは大得意です。
今回の改正案では、グローバル化が進む中で種苗法が本来の役割を果たせるように、登録品種の扱いが厳格化される見込みです。
2018年12月に制定された水道民営化法や漁業法改正と同じ方向性で、日本国民の水と食の安全と自給を犠牲にして、外国資本に日本の公益事業や産業を売り渡そうという政策だと、強く反対する意見もあります。
種苗法改正は、農村を支える家族農家などの生産基盤を脆弱化させる可能性もあるとの指摘もあります。
政府は今一度、農業者ら利害関係者とともに議論を行い、種苗法改正を検討する必要があるのではないでしょうか。