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柴咲コウ、種苗法改正に憤り。コロナの影で日本の「食」が外国資本に売られる=原彰宏

改正か、改悪か

自家増殖には、農家の長年の知恵と経験が詰まっていると言えます。

今回の政府改正案では、「育成権」保証のために、「登録品種での自家採種などを制限する」内容も含まれています。「など」ですから自家増殖も含むのでしょう。

でも「自家増殖」は農家の腕の見せ所であり、品種改良の肝であり、いま食卓に並ぶ野菜や果物は、自家増殖のおかげで美味しく安定的に食べられているのです。

果たして今回の「種苗法改正」は、

・権利者保護の改正か
・農業経営圧迫の改悪か

すごく大事な内容かと思われますが、ほとんどというか、マスコミには一切取りあげられず、コロナ一色の風潮で、世間が知らない間に閣議決定され、連休明けから国会審議が始まるのです。

自家増殖が「鍵」か

農家などの現場サイドから出ている危惧は、以下の2つです。

1)自家増殖が一律禁止になるのではないか
2)外国資本に種子が独占されるのではないか

まずは、今回の改正で、登録品種になると自家増殖が制限される(できなくなるとは言っていないが)ようで、だとすれば、登録品種でなければ自家増殖して良いということになります。

農水省の説明では、登録品種は種子全体の5%ほどだと説明しています。

現行法では、農家は原則として自家採種は認められていますが、これに対し農水省は、自家採種を禁止する作物を増やし続けています。

この禁止作物の数は、2016年には82種でしたが、2019年には372種になりました。ほうれん草や人参は登録品種ではありませんが、この禁止植物に入っています。

どういうことですかね。

「育成者権」の保護と、「自家増殖」の禁止。

そもそも種苗法を改正することになったきっかけが、日本特有の農産物品種が、海外で簡単に模倣されて栽培されているということにあります。

今回の改正では、米や果物、野菜の9割前後の一般品種は制限せず、ゆめぴりかのような米やシャインマスカットのようなブドウといった登録品種について、自家採種などを制限する内容となっています。

「日本の品種を守ることが、今回自家増殖(採取)を原則禁止とした背景にある」これが農水省の見解です。

農家サイドでは「自家増殖が一律禁止になるのではないか」という不安は消えないようで、これに対して農水省は「一般品種については自家増殖できるので、誤解が解ければ反対する理由はないのでは」と述べているようです。

前述の通り、自家増殖禁止の対象が数年で急速に増加していて、種苗法が成立した1978年には、農家の自家採種の慣行に配慮し、自家増殖を認めない植物は、挿し木等によりきわめて容易に繁殖するキク等の花卉類やバラ等の鑑賞樹に限られていましたからね。

農家の人たちが、農水省の見解を鵜呑みにできないのはよくわかります。

今後も品目リストを増やし、これまでの対象である栄養繁殖の植物だけでなく、種子繁殖の植物も追加していくと、農水省の回答があるようです。

「農民の種子への権利の抑制ではないか」

農家の人たちは、こう訴えています。

中でも改正の影響が今後出てくると予想される野菜の分野においては、野菜生産農家に情報が十分に行き渡っていないという指摘もあります。

その背景には、野菜の種子はほとんどが「F1品種」という自家採種できない種子が多く、また、近年野菜の登録品種の数も少しずつ上昇しており、今回の改正を契機にさらに増加する可能性もあるとの指摘があります。

「育成者権」保証もわかるが、自家増殖も必要…という難しい選択のようですね。

Next: 種苗法改正のもう1つの問題は、登録品種の「許諾制」導入である――

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