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なぜ最悪な経済状況でも株価上昇?ビギナーズラックで笑う投資家がハマる落とし穴=栫井駿介

株価には天井がある

確かに、例えば年率20%の成長が続くとすれば、株価がそのままだとして10年後のPERは16倍になります。しかしながら、企業の成長率はやがて鈍化しますから、そううまくはいきません。まして、この前提でも株価は上がらないことになります。

つまり、合理的に考えるとやはり株価には天井があるのです。時間が経って成長率が鈍化すると、高いPERを支えられなくなります。その瞬間、それまで買っていた投資家は一気に離れて株価が下落することになるのです。

かつてのソフトバンクグループを覚えているでしょうか。2000年頃にIT銘柄としてもてはやされ、株価はPER等の水準を無視して上昇を続けました。しかし、ITバブルの崩壊で、株価は1/100にまで落ちてしまいました。

ソフトバンクグループ<9984> 月足(SBI証券提供)

ソフトバンクグループ<9984> 月足(SBI証券提供)

その後も、同社はボーダフォンの買収などを通じて着実に成長を続けています。利益水準は当時の約100倍です。しかし、株価はいまだに当時の高値を越えていません。高すぎる株価で買って逃げ時を逃してしまうと、そこから回復するのに何十年もかかってしまうことを示しています。

非合理的な株価は短期投資家にとって絶好の獲物だが、彼らが去った後は死屍累々

では、なぜ下がるとわかっているのに買う人がいるのでしょうか。それは、私たちとはプレイしているゲームが異なるからです。

異常なほど高いPERの銘柄に群がる人は、短期で大きな利益を出そうとする人たちです。株価は、合理的な水準にある時はゆっくりとしか動きません。しかし、それが非合理的な水準になるほど大きく動くという特殊な性質を持っています。

したがって、「非合理的」に上昇すればするほど、短期の投資家にとってこれほど美味しいゲームはないのです。

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上の図で説明します。企業の価値は、青帯のようにゆっくりと増えていくものです。急成長企業でも、年率20%程度といったところです。これに沿っているうちは、何倍になるほど大きくは伸びません。(ステージ①~②)

しかし、調子の良い企業には段々と資金が集まり始めます。すると、買いが買いを呼んでやがて価値を上回る水準にまで上がり始めます。株価が踊り始めると、もはや価値など関係なく急上昇を描くようになります。(ステージ③)

ここからは、これまでとは完全に別のゲームです。新たな買い手が現れる限り、いくらでも株価は上がり続けます。その企業が魅力的であるほどなおよく、ベテランの短期投資家も初心者投資家も入り混じって株価を押し上げます。こうして「イナゴタワー」が完成するのです。ビットコインなども同じ現象と言えます。

しかし、この上昇は長くは続きません。大きな利益が出るほど、投資家は利益確定させたい気持ちに駆られます。無謀な水準だとわかっている人ならなおさらです。そのため、成長の鈍化や不祥事など、少しでも悪い材料が出ようものなら我先に売ろうと考えます。材料などなくとも、株価が下がったこと自体が悪材料になることもあります。

こうして誰が先に売り抜けられるかという「ババ抜き」となり、最後に取り残された人、特に銘柄に惚れた初心者を中心に資産が半分以下になってしまうということが起きるのです。もちろん、こうなるともとの価格に戻る余地はありませんから、ナンピンは厳禁です。(ステージ④)

短期の投資家が抜けて、最後に諦める人が出る頃には、逆に価値以下に下がっていることも珍しくありません。この後、誰も見向きもしない低迷期間が長く続くのです。(ステージ①’)

Next: 多くの短期投資家は「ステージ③」で利益を出そうとします。それが彼らに――

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