コロナ禍を追い風にAmazonほかEC各社の業績は好調です。今回は主要5社の決算を紐解きながら、各社の成長率の違いとその要因を解説します。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
(筆者注:この記事はYusuke Gotoさんとの共同制作です。)
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2020年6月11日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
AppGrooves / SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
コロナ禍でEC業界に起きた変化
今回は、2020年になって初めて発表されたECビジネスの決算を読み解いていきたいと思います。取り上げる企業(もしくはサービス)は、以下5つです。
・Amazon(マーケットプレイス)
・楽天(国内EC)
・ヤフーショッピング
・Shopify
・BASE(BASE事業)
今回は、マーケットプレイス型のECを比較するために、Amazonはマーケットプレイス事業のみ、楽天は国内ECのみ、BASEはBASE事業のみの数字で比較していきたいと思います。
ヒント:ECビジネスの取扱高(GMV)は全体的に前年同期比で成長しています。しかし、成長の加速度が上がっているビジネスは、●●●と●●●のみ。この2社の成長が加速した理由は後述します。
はじめに、多くの業界において重要な「新型コロナがEC業界にどのような影響を与えているのか」を見ていきましょう。
株式会社ナウキャストと株式会社ジェーシービーが、JCBのクレジットカードの取引データを活用した「4月後半の国内消費動向指数」を発表しました。
これは、コロナウイルスが拡大する前の2020年1月と、拡大後の2020年4月のクレジットカードの匿名加工された取引データを元に消費指数等を調べたものです。上記画像を見てみると、各業態が軒並みマイナスになっているものの、ECに関しては+24.2%と、非常に好調です。
ちなみに、EC以外で消費指数が増加しているのは、「家電」「電気・ガス・熱供給・水道業」「コンテンツ配信」です。
在宅勤務や外出自粛で在宅時間が増えているなかで、オンライン上での消費が活発になることが、すでに顕著に数字として現れており、ECビジネスの成長を支える要因になっていることは間違いなさそうです。
各社のGMVの変化
それでは、今回取り上げる5社のGMV(総流通額:Gross merchandise volume)を比較してみましょう。
<参考>
Amazon.com Announces First Quarter Results
Amazon.com Announces First Quarter Sales up 17% to $59.7 Billion
楽天 2020年度第1四半期決算資料
Zホールディングス株式会社事業指標推移表
Shopify Q1 2020 results
Shopify Q4 2019 Financial Results Conference Call
BASE 2020年12月期第1四半期決算説明資料
今回取り上げている全企業の前年同期比(YoY)が、大きくプラス成長となっており、引き続きECビジネスの需要の高さが見てとれます。
その反面、前四半期比較(QoQ)に注目してみると、ヤフーショッピングとBASE以外の企業において、なんとマイナス成長となっています。
しかし、この時期(1月-3月)のQoQがマイナスになるのは、毎年のトレンドです。おそらく、今四半期の比較となる前四半期(10月-12月)は、サイバーマンデーやブラックフライデーなどのクリスマス需要や年末需要で毎年非常に大きな売上があることが理由のひとつだと思います。
また、前四半期と比較してGMVが下回っているということは、マーケット型のECビジネスにおいてはコロナの影響はまだそれほど大きく出ていないと考えられるので、次回決算に注目したいと思います。
Next: 次に、各社の成長率の差分(加速度)を見ていきたいと思います。YoYや――