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日本人の8割が加入する生命保険はムダだらけ。対策すべきは不慮の事故より長生きリスク=俣野成敏

「不慮の事故」と「長生き」、どちらの可能性が高い?

梅原:「Kさんが見ていなかったのは、“長生きリスク”です。自分が亡くなった時のことばかりを考えて、『そのまま生きた場合はどうなるのか?』ということに、目を向けていませんでした。

一体どういうことなのか、まずは統計からご紹介したいと思います。

厚生労働省が毎年発表している「簡易生命表の概況」の平成30年(2018年)版によると、男性の平均寿命が81.25歳、女性は87.32歳と、過去最長になっています。概況内の「特定の年齢まで生存する者の割合の年次推移」によると、40歳まで生存する確率が男性98.4%、女性が99.0%となっており、65歳まで生存する確率も、男性89.5%、女性94.5%となっています。つまり、ほとんどの人が65歳以上まで生きている、ということです。
※参考:平成30年簡易生命表の概況 – 厚生労働省

実際のところ、現在の日本人は、どれくらいの確率で入院や通院をしているのでしょうか?

厚生労働省が3年ごとに調査をしている「患者調査」平成29年(2017年)版の概要によると、全国の受療率(人口10万対)の総数は、入院が1036、外来が5675でした。つまり、入院する確率が約1%で、外来で受療する確率が約5.7%だった、ということになります。

年齢別に見ると、64歳までの入院率は1%未満であり、65歳以上で約2.7%、75歳以上で約4%です。外来受療率に関しては、65歳以上で10.4%、75歳以上で11.9%となっており、それ以下の年齢では1ケタ台になっています。年次推移表を見ると、近年、入院・外来ともに65歳以上は低下傾向にあり、それ以外の年齢も、ほぼ横ばいで推移しています。
※参考:患者調査 – 厚生労働省

高齢になれば、その分、病気になる確率も高くはなりますが、予想よりもずっと低い数字だということが、おわかりいただけることと思います。

もちろん、統計通りにいかない可能性も考えられます。しかし確率論的にいうのであれば、確率が高いことのほうが、より現実に近いのも事実です。

将来のことは誰にもわからないからこそ、数字である程度の予測をつけた上で、例外的な事態も想定し、備えておくことが大切なのではないでしょうか。

ポイントは、『どこに比重を置くか?』ということです。Kさんの場合は、明らかに低い確率のほうに比重を置き過ぎていました。結果的に、不必要に保険を手厚くしてしまい、貯金ができない大きな要因となっていたのです」。

死亡保険を確率論的な視点から考えた場合、万に一つしかない不慮の事故や病気のために、多額のお金を払い続けるよりも、老後資金のことを考えたり、自分が長生きした場合の備えについて思案しておくことのほうが、より現実的だと言えるでしょう。

Next: 現状でも、Kさんに万一のことがあれば、国から子どもに遺族年金が支給――

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