必要のない保険料を払い続ける人が多い
Kさんは大卒ではなかったため、新入社員として入った会社では、同期との間に昇給や昇進で差をつけられ、悔しい思いをしました。
このような経験から、子どもたちには大学まで行かせたいと考えており、特に下の男の子への教育には熱心です。とはいえ、子どもに差はつけたくないので、上の女の子も同じ塾へ行かせています。
Kさんが相談に来たのは、貯金ができずに悩んでいたことがキッカケでした。本当は、子どもたちを私立中学に入れたかったのですが、貯金は60万円ほどしかありません。Kさんの担当をすることになったのが、梅原さんでした。
梅原:「Kさんの場合、残念ながらご希望の私立中学入学は難しいのが実情です。このままだと、5年後の私立高校入学も難しいかもしれません。収入が結構あるのに、貯金ができていない要因の1つに、保険と教育費の比重が高いことが挙げられます。生命保険に月3万6,000円と、子どもたちの塾代に4万2,000円を使っています。ここを見直すことが、収支改善の要になることは間違いありません」。
Kさんの、改善前の収支は以下の通りです。
梅原:「Kさんは5つの保険に入っていました。内訳でいうと、万一、働けなくなった際に、月々10万円が65歳まで支払われる収入保証保険が1つと、ドル建て終身死亡保険に2つ。こちらは、外資系の生命保険会社が発売しているものです。保険の受取人を子どもにして、死亡時に一括で500万円が、それぞれに支払われるよう、同じものに2つ加入していました。後は、更新型の医療保険に1つ。入院や手術をする際に支払われるもので、死亡保障150万円付きです。さらに、掛け捨ての府民共済にも入っていました。保障内容を見てみると、重複しているところがあります。
実は、日本は世界的に見ても、公的医療保険が充実している国です。たとえば診療費や薬代など、一定の金額を超える高額な医療費がかかった場合、超えた金額分を支給してくれる高額療養制度があります。
私たちFPが保険の話をする際も、必ずこの高額療養制度を確認するようにしています。そうしないと、保障が無駄に手厚くなってしまい、本来であれば支払う必要のなかった保険料を支払うことになりかねないからです。
この公的医療保険でカバーしきれない分や、足りない部分を保険で埋めることが、保険加入時の基本戦略になります」。
“長生きリスク”は、保険ではカバーできない
Kさんの保険加入状況を拝見し、気になったのは、あちこちの保険会社の保険に加入していたことです。とにかく不安を打ち消そうと、いろいろ手を伸ばした様子が伺えます。
保険のセールスマンも、意図的にやっているわけではないでしょうが、どうしても立場的に弱い人のところに集まりやすい傾向が見られます。
人間は生きている以上、どんな人も不安から逃れることはできません。基本的には、上手く付き合っていくしかありません。
付き合うためには、まずはよく知ることから始めることです。「怖いから」と不安から目を逸らしていては、真実は見えてきません。
では、Kさんが見ようとしていなかった真実とは何でしょうか?