「日本批判であれば何を言ってもよい」というムード
大統領府の金尚祖(キム・サンジョ)政策室長は7月1日、近ごろ日本が国際舞台で韓国をけん制しているとして、「韓日関係が過去の垂直的な関係から水平的な関係に変わる中、日本がアジアにおける主導権を失いかねないと懸念しているため」とラジオ番組で発言した。
他国を誹謗する発言は外交的に慎重でなければならないが、韓国大統領府にそのような配慮はない。タガが外れた状態である。つまり、日本批判であれば何を言ってもよい、というムードであろう。
「日韓関係は、過去の垂直的な関係から水平的な関係に変わる」としているが、韓国こそ歴史問題という古証文を持ち出して、日本に韓国の要求を100%飲ませようという「垂直関係」に持込もうとしている。それは、無理難題と言うべきだ。
日韓関係が、水平的な関係でなければならぬという指摘はその通りである。その適例が、8月4日以降の日本企業の差押物件の現金化問題に現れている。日本が被害を受ければ、「やり返してよい」という国際法の決まりがあるのだ。
これについて、興味深い指摘が韓国から出ている。
徴用工判決は象徴的意味
ソウル高等法院のある部長判事は、『韓国経済新聞』(7月1日付)で次のように指摘している。「徴用工判決そのものは象徴的な意味、宣伝的な意味がある」としている。「相手国家・国民の財産に対して実際に執行に出るのは、また別の次元の問題」と指摘した。文政権は、韓国大法院の判決だから「金科玉条」扱いで、政治的な介入はできないという紋ギリ型だ。明らかに、「反日のテコ」に使う政治的意図を滲ませている。
前記の部長判事が続けて、「日本政府は、自国民保護義務に対する直接的目的により、その責任を果たす可能性が生ずる」とし、「日本の取ることのできる措置が、韓国の考える善意の措置と異なる場合もある」とその合法性を説明している。
ここでは、日本がいかなる報復措置を取ろうと、韓国は苦情を言うべき立場でないと示唆している。だから、前段で「徴用工判決そのものは象徴的な意味、宣伝的な意味がある」と規定しているのだ。
国際法では、司法が条約など国家間の取り決めに干渉してはならない、という「司法不干渉」原則がある。韓国大法院(最高裁)は、このルールを冒したのだ。文政権は、「象徴的・宣伝的」な判決を政治的に利用しようとしている以上、日本も最大限に政治的に利用したとしても苦情を申し立てられる立場にないのだ。
この「不毛の争い」に、韓国与党は異常な熱意を見せている。日本の報復はいくらでも受けるという「玉砕戦法」である。この問題は後で再び取り上げるが、高い支持率のもたらす「罠」に嵌まっている適例である。
日本が、韓国への半導体主要3素材の輸出手続き規制強化をして、この7月で1年になる。日本は当初から、輸出数量の規制でなく輸出手続き規制強化であると、口を酸っぱくして説明してきた。現在、日本からの半導体主要3素材の輸出量が、減っていなかったことを検証できる状態になった。
それにも関わらず韓国は、日本を打ち負かして損害がなかったと宣伝している。その最たる例が、文大統領発言である。