集団免疫は獲得できるのか?
なお、安宅和人氏は集団免疫を人口の70%としていますが、西浦教授によると20%~40%でも集団免疫になるというように変わってきています。
事例は2つです。
2月のダイヤモンド・プリンセス号内での感染では、船内での感染者隔離は行われたが、約3,000人の乗船者に対してその17%が感染した(累積罹患率が約17%)。70%には遠く及んでいない。
スウェーデンはロックダウン(都市封鎖)などの行動制限を行わず、集団免疫に達することを受け入れるとしています。現在、人口の約35%が免疫もつ段階で、流行は下火になろうとしている。最終的な累積罹患率は50%にも至らないだろうと言われています。
以上から、感染者の隔離が適切に行われた時という条件では、集団免疫は20%~40%と推計されることもあるとされています。間をとって30%なら、日本での期間は、2.3年×(30%÷70%)=0.98年≒1年に短縮します。
2021年の3月に収束。ただし、これは「変異をするウイルスが、毒性を変えない」という前提のものです。変異が感染力と症状を変えれば、この限りではない。インフルエンザのように、有効な治療薬ができるまでは「終わりなき戦い」になります。
なお重症化を止める治療薬ができれば、自然治癒が少ない怖さはあってもインフルエンザ並みになっていきます。
感染数の少なさという日本の有利さの不利
日本では、東京で増えていても1日50人台であり、累積確認感染数が1万8,593人と少ない(7月1日)。100万人あたりでも150人です(編注:原稿執筆時点7月1日。なお、7月2日〜7日まではいずれも100人以上の感染者数が出ており、7月8日には75人と再び100人以下に戻っています)。
米国の262万人、100万人あたりで8,190人と比べて1.8%、ウイルスが違うのではないかと思えるくらい少ない。生活習慣、人種、貧困の少なさ、BCGによる交差免疫など、いろんな要因が挙げられていますが、原因は確定していません。
未確認の感染者は、わかっていません。日本のように低い抗体保有率での検査では誤差が大きくなります。
神戸の医療センター中央病院の、外来のPCR検査では3.3%でした(5月4日)。大阪市立大学の付属病院では1%でした(5月1日)。巨人軍では1.8%でした(6月3日)。1%~2%くらいではないかと推計できます(126万人~252万人)。
海外では、スウェーデンでは25%、NY市では21%(NY州14%)、ロス4.1%、ドイツ15%、米国サンタクララ3.3%、オランダ3%とされています。日本は、米国サンタクララ3.3%、オランダ3%に近い。
感染が少なかったカリフォルニアやテキサスでは現在が第二波です。カリフォルニアの新規感染数は7,118人、テキサス州は6,542人です(6月2日)。
日本やカリフォルニアのような過去の感染数の少なさは、集団免疫にとっては不利に働きます。「感染期間が長引く」という不利さです。日本経済は、コロナショックの影響を全米平均より2、3倍長く受けることになるでしょう。
安宅モデルは、病床をオーバーフローさせる限度までの新規感染があったとした時の試算です。3万の病床の50%が埋まる状態なら、収束までの期間は、2.3年の2倍の4.6年になります。
しかし70%ではなく、35%の感染で集団免疫になると仮定すれば、収束までの期間は2.3年です。どう考えたらいいのか? 当方は、
新型コロナのウイルスの変異が、毒性を変えないという仮定で、
集団免疫を35%、
病床の50%が埋まるレベルの速度とし、
2.3年と見ています。
「不透明な将来は、確率的数値」で想定するしかないのです。