後ろ向きな補填支出に使われる税金
それでも無理をして財政バランスの悪化を放置すれば、市場がそのコストを国に求めるようになります。
それが将来のインフレ懸念、通貨価値の下落懸念、放漫財政懸念などによる金利上昇、自国通貨の下落などで、これが資産価値の下落や生産活動の制約になります。
財政需要を漫然と拡大するのではなく、治療法やワクチンの開発などで、感染の拡大や国民の不安を抑えるために使うほうが効率的です。
残念ながら、主要国の財政を見ると、医療体制や治療方法の対処に向けた支出よりも、国民に給付金を配ったり、雇用保険、休業補償など、後ろ向きな補填支出が多くみられます。
日本では感染がまた拡大する中で、観光、旅行業者救済のための旅行あっせん策「Go Toキャンペーン」が実施されようとしています。感染懸念が強い中では人は動けず、観光地の多くが豪雨災害で傷ついているのですが。
コロナ対策としてここまで使った財政資金11兆ドルの回収めどはまったく立ちません。コロナの収束さえ見えない状況では、さらなる支出拡大も予想されます。
財政再建は困難
コロナ後には財政の健全化が急がれると当局は言いますが、よほどの政治腕力がないと、財政の再建は容易でありません。日本が良い例です。
金融面からの大規模緩和で、主要国の資産価格は実体経済と大きく乖離して高まっています。
この不安定な中で、財政や金融のアンバランスを、市場の力で強引に修正させられると、株価の大幅下落などによる市場の混乱ばかりか、経済の負担も甚大となります。
これはコロナへの対処以上に困難な問題になりかねません。出口を見据えた財政金融政策が求められます。
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『マンさんの経済あらかると』(2020年7月13日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。