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「夢は叶う」が人生を壊す。天職は“あきらめ”の向こう側にある=午堂登紀雄

仕事を選ぶ基準は、「自分の未来につながる仕事か?」

それで「やはり転職が望ましい」という結論になった場合ですが、次の仕事を選ぶ際に重要なのは、会社の名前や規模、年収や福利厚生などではありません。

「自分の未来につながる手段かどうか」という軸です。

たとえば「将来はアパレルビジネスをやりたい」と考えている人なら、アパレルメーカーやアパレルショップといった直接的に関係する業種だけでなく、素材企業、デザイン企業、物流企業なども視野に入るでしょう。自分の視野を広げ視座を高く持つには、本業以外の周辺の事業の構造や環境を知ることも役に立つからです。

そして仮に一時的に年収が下がったとしても、その仕事は目的に近づく手段であり、学びながらおまけに給料までもらえるのですから、本来は躊躇などないはずです。

また、企業の口コミサイトなどもまったくアテにならないこともわかります。なぜなら、「他人がどう感じるか」は自分にはまったく関係のない話であり、自分が実際にそこで働いてみないと、どう感じるかはわからないからです。

同じ会社、同じ仕事でも、「天職だ!」と嬉々として取り組んでいる人がいる一方で、「この会社はサイテー」とイヤにやって辞めていく人がいるとおり、他人の評価ほどあてにならないものはありません。

また、そういうところに口コミを書く人は、たいてい不満で辞めた人とか恨みがある人、あるいはサクラが書いた提灯記事のどちらかの可能性が高いでしょう。

「なんとなく」で進んだ進路で挫折

たとえば私の場合、最初の就職で失敗したのは、「自分は日商簿記検定1級を持っているし、公認会計士の勉強もしてきたし、米国公認会計士の資格を目指しているから、まずは会計事務所かな」という安易な発想だったためです。

なぜなら、自分がいま持っている資格や勉強してきたこと、そして目指している資格は、なんら未来の方向性に根差していないからです。というか、そんなことは考えたこともなかった。

たとえば「なぜ会計士になりたいか?」というのも、なんとなくプロフェッショナル的な響きがあり、周囲からも尊敬される職業であり、かっこいいから、という感じでした。

そして会計士に合格したら、就職先は自動的に監査法人か外資系企業の経理という、これまた主体性のない考えでした。

それが仕事にも出たのでしょう。入社してすぐミスを繰り返すようになり、いつも説教ばかりされウツ状態となり、わずか1年で逃げるように辞めました。

挫折の次に就いた仕事

そこで次の転職のときに考えたのは、「みじめさを払拭できる仕事」であり、そのために「努力が実を結びやすい仕事」であり、それを計測するために「努力の量と方向性が、入社する前からわかりやすい」ということで、当時破竹の勢いで成長していたコンビニ業界を目指すことにしました。

「努力の量と方向性が、入社する前からわかりやすい」と感じたのはなぜかというと、当時は独身・ひとり暮らしで日常的にコンビニを利用していましたから、どういう店なら行きたくなるか、どういう店なら行きたくなくなるかが体感として理解できたからです。

そしてコンビニは、人を雇いマネジメントし、接客などのオペレーションをレベルアップさせ、売れる商品を売り逃しなく注文し、上手に陳列し、売上から経費を引いた利益を最大化するという、非常にわかりやすい「会社の縮小版」でしたから、何をやればいいのかがわかりやすかったのです。

その中でも「仕事のやり方が固まっていない後発参入組の方が、自分も何か貢献できるだろう」ということで、業界トップ3を避け、最後発のコンビニ本部に入社しました。

大手であれば優秀な人材が行くだろうから、そうなれば自分は再びみじめさを味わうかもしれない。業務手順もほぼ固まっており、何か価値を出せる自信もない。

でも後発ならそこまで優秀な人は行かないだろうし、仕事のやり方もまだ未完成だろうから、自分の創意工夫が受け入れられるかもしれない、と考えたのです。

この選択はビンゴで、朝7時から夜10時まで働き続けたおかげで、入社3年後には優秀社員証を受賞するまでになるなど、当初の目的は達成されました。

しかし社内で認められるようにはなったものの、自分の能力の頭打ちを感じるようになりました。

また、上場企業で労働条件に関するコンプライアンスがしっかりしていたこともあり、ほどほどに働きたい同僚と、もっとがむしゃらに働きたい自分との価値観の相違から、なんとなく居心地の悪さを感じるようにもなっていました。

Next: もし道に迷ったら、「自分の子どもに語りたい方を選べ」

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