中国でガチャガチャ(カプセルトイ)市場が急拡大しています。その成長に日本が大きく関わっていることに注目です。大手企業であるポップマートも最初はソニーエンジェルの真似でしたし、52TOYSもバンダイから多くのことを学びました。これからも収蔵玩具(大人玩具)の市場が成長し、いまだに日本のアニメが強い影響力を持っていることを考えると、日本のメーカーや販売業者が活躍する余地は多分にあるのではないかと思います。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)
※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2022年3月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。
中国で独自進化を遂げる「カプセルトイ」
今回は、収蔵玩具についてご紹介します。
収蔵玩具というのは、中国で使われる用語でコレクションの対象になる大人向け玩具のことです。2018年にポップマートから発売された盲盒(マンフー、ブラインドボックス)のMollyが爆発的に売れ、ブームの様相を呈しています。
日本でも同じような販売スタイルのフィギュアがたくさんあります。6種類ぐらいのフィギュアが一連のシリーズとして発売されますが、箱を開けてみるまでどれが入っているかはわからないというものです。当然、複数購入すると同じものが被ってしまう可能性があるわけです。被ったものは友人と交換したり、フリーマケットなどで売却することになります。
それだけだと購入を煽るアコギな販売方法になってしまうため、全部が入っているアソート(セット)販売も行われますが、シークレットフィギュアも用意されていて、アソートを買ってもどのシークレットが入っているかわからないという仕組みになっています。
若い世代=Z世代の女性を中心にブームになり、ポップマート以外にも男性を意識したブラインドボックスを販売する企業も登場し、香港上場を果たしたポップマートを中心に、収蔵玩具という新しい玩具ジャンルが生まれました。
この収蔵玩具の世界で特徴的なのは、テック企業の参入が少ないということです。テック企業はこれまであらゆるジャンルに、開発力を活かした効率化、資金力を活かした優待策で参入をしてきました。しかし、玩具の世界は効率や優待よりも、玩具そのものに魅力があるかどうかの方がはるかに重要であるため、簡単には参入ができないのです。
また、中国では大人の玩具にあたるものと言えば、骨董か美術品でした。これに玩具が加わろうとしています。日本では、すでに鉄道模型やモデルガン、レトロ玩具など大人がコレクションの対象にする玩具がたくさんありますが、中国でもこのような市場が生まれようとしています。
そして、中国の収蔵玩具の世界は、日本のアニメや玩具が大きな影響を与えているということです。
ブラインドボックスのヒントになったのは、日本のソニーエンジェルですし、男性向け玩具市場が生まれたのは、日本のバンダイの聖闘士星矢シリーズがヒットしたことがきっかけになっています。この領域では、日本の影響力は非常に強く、日本からも何らかの形で参入できるチャンスは大きいと思います。
今回は、収蔵玩具市場の概観をご紹介し、業界をリードする「ポップマート」と「52TOYS」の2社についてご紹介します。