今回は「中小型株シリーズ」の第3弾です。とにかく今は大型株に注目が集まっていて、中小型株・成長株は株価が下がっていたり、全く上がらないという状況が続いています。中小型株の中には、将来的な成長性が大きいにも関わらず他の中小型株と同じように無視されているものがあるのではないかと考えます。
今回の切り口は「再復活銘柄」です。中小型株はコロナショック後の2020年~2021年にかけて、株式ブームによる個人投資家の参入もあり、株価が大きく上がりました。ところが、このブームが去り、PERが上がりすぎていた状況も相まって、株価は急激に下落しました。
今ではもはや売る人がいないのではないかと思えるくらい割安となっていて、まさに投資のチャンスなのではないかと私は思っています。かつて株価が高かったけれども今は株価が下がっていて、一方で業績は良く、事業の中身も健全である銘柄を3つ紹介させていただきます。※ご紹介する銘柄が直ちに推奨銘柄というわけではないことをご承知おきください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
スクリーニング条件
今回もマネックス証券の銘柄スカウターを使ってスクリーニングをかけます。
- 時価総額1,000億円以下
- 従業員数1,000人以下
- 52週株価相対水準0~20
- 予想PER相対水準0~20(過去5年)
- 営業利益10%以上(直近3年間平均)
上記の条件でスクリーニングしたところ、52件の銘柄が該当しました。レノバ<9519>、チェンジホールディングス<3962>、JCRファーマ<4552>、M&Aキャピタルパートナーズ<6080>といった耳にしたことがあるような銘柄もあります。
ここからはチャートと業績を見て絞り込んでいきます。
業績が右肩上がりに伸びていて、一方でチャートは明らかに相場にもまれて一度上がったけれども下がっているというものを選びました。
残った銘柄のビジネスモデルや事業の特性を一つ一つ見ていって、今回は3銘柄に絞りました。
「シンクロ・フード」
1つ目はシンクロ・フード<3963>です。まずは業績を見てみましょう。

シンクロ・フード<3963>通期業績推移(SBI証券提供)
コロナ禍が厳しかったということはありますが、比較的順調に業績が伸びています。

シンクロ・フード<3963>月足(SBI証券提供)
2018年に大きく盛り上がった後に落ち込んで、コロナ禍で業績が悪かったので株式ブームの恩恵も受けず、一方でそこからはじわじわと回復してきています。
事業内容としては、「飲食店ドットコム」を運営しています。
顧客を飲食店に絞って、飲食店の経営者が必要とする情報を提供するというものです。飲食店に営業をかけていって、飲食店側としてはまとめて頼めるので便利なサービスとなるでしょう。
基本的にはweb系なので、一度システムを整えてしまえば、使ってくれるお客さんが増えれば増えるほど費用はほとんどかからずに売上が増えてその分利益が伸びることになり、利益率はかなり高くなります。
営業利益率は直近で28.82%と高く、大きな投資が必要ないのでキャッシュフローも優良です。
もちろん競合もいるとは思いますが、現時点でこれだけじっくり伸ばし続けられているということは、飲食店からの信頼はかなり厚いのではないかと想像できます。
一方で、懸念点もあえて挙げたいと思います。
物件を探したり、仕入れをしたり、M&A仲介をしたりといろいろやっているのですが、実際の売上の大部分は求人によるものということです。
今は飲食店に特化した求人サイトが他にあまりないからこそうまくいっている部分がありますが、より安価であったり大手の総合系の求人サイトが飲食店の求人に力を入れたりすると、競争になってしまいます。
競争優位性(経済の堀)がそこまでないというところが不安材料にはなってきます。
飲食店に特化しているという強みがどこまで他の求人情報サイトからの優位性を持ち続けられるかが今後の課題かと思います。
PERは15.9倍で、これから成長すると見られる企業にしてはかなり低いです。
ROE18%、ROIC16.47%というのもかなり高い水準です。設備投資が無いので資本効率性は高いです。
足元で株価が下がっていますが、業績は悪くないので、不安は比較的小さな会社だと思います。
