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底値から7倍!なぜ「無印良品」株を持ち続けられた?企業価値を見抜いて耐える、長期投資の真髄とは=栫井駿介

良品計画(無印良品)の株価が、底値から約7倍、私の買値から見ても4倍にまで高騰したのをご存知でしょうか?この驚異的な成長の裏には、企業内外での激しい変革と、投資家の忍耐強い長期保有がありました。今回は、私が5年間にわたり良品計画を追い続けてきた経験を基に、その株価変動の背景にあった企業の実態、そして「なぜこの銘柄を持ち続けられたのか」という長期投資の真髄を解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

苦難の道のり!良品計画の株価変動と業績低迷期

良品計画の株価は、特にここ1年で大きく上昇し、約2.5倍にまでなっていますが、その歴史を紐解くと、決して順風満帆ではありませんでした。

良品計画<7453> 月足(SBI証券提供)

良品計画<7453> 月足(SBI証券提供)

株価は2017年から2018年にかけて大きく上昇した後、2019年から2020年にかけて大幅に下落し、一時4,000円あった株価が1,000円を割り込む水準にまで落ち込みました。その後、コロナ禍で一時的に2,800円まで持ち直すも、再び1,000円近くまで下落するという苦しい時期が続きました。

私が良品計画への投資を開始したのは2019年からですが、この5年間のうち、約4年間は株価が低迷する「苦しい期間」でした。実際、会員の方からも株価が上がらないことに対する厳しい意見が寄せられたほどです。しかし、私が推奨を止めなかったのは、この会社の「中身」を深く見ていたからに他なりません。

業績を見ると、営業利益は株価上昇期(2018〜2019年頃)に拡大していましたが、その後は大きく落ち込みます。

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出典:バフェット・コード

特に2020年8月期は、決算期変更とコロナ禍が重なり、売上が一時的に落ち込みましたが、その後の2021年、2022年、2023年を見ても業績は横ばいで、過去最高益を超えることはありませんでした。

より顕著だったのが、利益率の低下です。かつて10%を超えていた営業利益率が、2023年8月期には5.7%と、ほぼ半減していました。これこそが、当時の良品計画の根本的な問題点だったのです。

絶好調の裏に潜んでいた「落とし穴」:ブランド力の過信と事業戦略の歪み

良品計画の歴史は、「絶好調時代」「絶不調時代」「復活の時代」の大きく3つの段階に分けられます。

まず、絶好調だった時代(2015年~2019年頃)について掘り下げてみましょう。

無印良品は、もともとスーパーの西友の一コーナーから始まり、生活雑貨、文具、食品などを扱う企業として店舗展開を進めて成長しました。

この時期に特に力を入れたのがアパレル事業です。ユニクロを真似るようにアパレル製品を売り出し、これが大ヒットします。アパレル市場は規模が大きく、単価も取りやすかったため、無印良品の業績を大きく押し上げました。

また、海外、特に中国への進出も成功要因でした。当時、日本製品は中国の富裕層に人気があり、無印良品は日本よりも高い価格で販売される「高級ブランド」として認知されていました(上海では日本の1.5倍程度の価格で販売)。

しかし、この成功体験は同時に失敗の種でもありました。無印良品は、ユニクロほどアパレルへのこだわりがないにもかかわらず、「無印」というブランド力と店舗があれば「黙っていても売れる」という状況に陥っていたのです。これは表面的には好業績で株価も上昇しましたが、実態としては潜在的な問題が蓄積していました。

私もこの頃から無印良品を好きになり、いつか株を買いたいと思っていました。しかし、株価が一時4,000円、PERも30~40倍に達していたため、さすがに高すぎると手が出ませんでした。その後、株価が下がり始め、2019年に2,000円程度(株式分割後換算)になったところで「いよいよ安くなった」と感じ、購入を開始しました。

しかし、当時の認識は甘いものでした。業績自体は最高益水準で推移しており、売上も伸びていたため、株価下落の本当の理由を深く考えていなかったのです。

<問題の予兆:キャピタル・グループの売り抜け>

実は、ファンダメンタルズ重視の長期投資で知られるファンド「キャピタル・グループ」は、かつて良品計画株の15%程度を保有していましたが、株価が下落し始めた時期に売りに出ていました。

私は当時、「勝手に売ってるだけだろう」と深く気に留めていなかったのですが、これは無印良品の未来の不調を暗示する兆候だったのかもしれません。

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