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石破政権のコメ対策は完全失敗…なぜ新米がさらに高騰?後手後手で食料品インフレが深刻化=斎藤満

米国のベッセント財務長官から、日銀のインフレ対応は「ビハインド・ザ・カーブ(後手に回った)と批判されましたが、政府のコメ対応もやはり後手に回りました。日銀はコメをはじめとする食料の物価高は一時的で、今後は下落に向かうとの認識でしたが、その誤りがいよいよはっきりしてきました。今年の新米価格は昨年からさらに大幅な上昇となって現れました。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2025年8月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

政府のコメ対応も後手に

昨年のコメ騒動、コメ価格高騰が政府には大きなダメージとなり、石破政権は米作について、ついに事実上の減反政策から増産に方向転換しました。そして政府備蓄米もほぼすべて吐き出し、5キロ2,000円以下の備蓄米を店頭販売することで、コメの平均価格をある程度抑えることに成功しました。

しかし、備蓄米の供給で平均価格は低下したものの、銘柄米は下がらず、価格格差は拡大しました。銘柄米については、物流で滞っていたのではなく、そもそも供給が少なく、絶対量が不足していたことがわかりました。これもあって、石破政権はコメの増産政策に転換したのですが、コメの増産は急には進みません。

休耕地を水田に戻すにも高齢化が進んだ農家では人がいなく、水田稼働率の拡大は容易でなく、結局、飼料米づくりを主食米用に代えるのが精いっぱいで、今度は飼料用のコメが足りなくなります。食用の増産も、今年の猛暑で一部農家ではすでに被害が出て、作柄も悪化が見込まれています。

この新米の争奪戦が生じていて、農協は昨年の扱い量低下を取り戻すべく、今年はコメ農家へあらかじめ支払う概算金価格を60キロあたり3万円に引き上げ、その影響で農協以外に渡す分も60キロ3万円が普及しました。これは前年より3割以上高く、これが最終消費者に転嫁されます。増産体制づくりが遅れたために、令和7年の新米価格も、昨年秋の3,000円台を大きく上回る5キロ4,400円から4,800円で出始めました。

今年のコメ価格を下げることには失敗しました。昨年の例からすると、今後新米の作柄が猛暑で不良となり、供給が制約されるとなれば、新米価格はここからさらに上がります。政府の対応は少なくともコメ対策としては後手に回り、日銀が想定する「コメ価格は今後下落する」とのシナリオは早くも瓦解しました。

一般食料品の値上げも止まらず

生鮮品以外の食料品についても、日銀は「一時的な上昇でいずれ減速」と予想していますが、これも見誤ったようです。

帝国データバンクによると、この8月の食料品の値上げは1,010品目に上り、前年を上回る値上げペースが続いています。そして10月も3,000品目を超える値上げが予定されていて、今年通年ではついに2万品目を超える大量値上げがほぼ確実となりました。

日銀が一般の食料品についても一時的な上昇と見た裏には、これが輸入物価の上昇によるものと考え、輸入物価が落ち着いてきただけにその影響もなくなると見たことによります。しかし、帝国データバンクの調査によれば、食料品の値上げ理由のうち、「原材料高」によるものが97.2%と、輸入物価が落ち着いてきても依然とした大きな要因になっています。

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