「ブラック労働」ではない、電通が抱える真のリスクと株の買い時=栫井駿介

新入社員の自殺という痛ましい事件を契機に、「ブラック企業」の代名詞となった電通<4324>。略式起訴を受け、省庁などが取引を一時停止するなどの影響もあり、株価は年初来安値水準で推移しています。電通は買いどきと言えるのでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

ブラック企業の代名詞「電通」が年初来安値水準に。買いどきは?

需要停滞を前に海外・デジタル戦略を加速

電通<4324>は、日本最大の広告代理店です。広告代理店のビジネスは、テレビや新聞などの広告枠を埋めるために、広告主を探し、広告の内容まで企画する仕事です。

そこで求められるのは、広告主を集める営業力と、効果のある広告を作り出すプロデュース能力です。これらに関して電通は群を抜いていて、業界2位の博報堂も歯が立ちません。売上高は4.5兆円対1.2兆円と圧倒的な開きがあります。

「電通マン」と言うと、テレビ業界を牛耳っているイメージがありますが、それは圧倒的な会社の強さが裏付けとなっています。それだけ、国内では盤石の基盤を誇っているのです。

しかし、その状況にも暗雲が立ち込めています。国内の広告需要は頭打ちとなり、成長する気配は見えません。国内経済が成長していないのですから、当然といえば当然と言えます。

さらに、ここ最近はインターネット広告が大きく台頭してきました。インターネットの広告では直接自社のホームページへリンクするため、広告効果が高いと言われます。インターネット広告は、近い将来テレビを追い抜くと見られています。

現在、インターネットは新聞や雑誌のシェアを奪っている状況ですが、スマートフォンでの動画利用が進む今、テレビ広告へも侵食してくるでしょう。そうなると、国内では敵なしと見られていた電通も安穏としてはいられません。

そこで、同社は2013年に英国の広告会社イージスを買収し、海外戦略に乗り出します。当時の電通の売上高2兆円に対し、イージスの売上高は1.5兆円という大型買収でした。これを機に、次々に海外企業を買収し、今では売上総利益に占める海外事業の割合は54%に達しています。

買収先は、単に海外進出を目論んだものから、最近はインターネット関連が中心です。それだけ、インターネット広告の台頭が電通にとって脅威になっているということでしょう。

Next: 労働改革はむしろ日本全体の課題。では電通が抱える本当のリスクとは?

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