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「ブラック労働」ではない、電通が抱える真のリスクと株の買い時=栫井駿介

本当のリスクは労働問題ではなく景気悪化

業績は順調に拡大し、純利益はイージス買収前から2倍に拡大しました。景気がいいという側面もありますが、海外戦略はまずまず順調のようです。株価もそれを好感してきました。

電通<4324> 週足(SBI証券提供)

電通<4324> 週足(SBI証券提供)

しかし、ここにきて問題になっているのが、労務管理です。同社の新入社員がパワハラや労働時間を苦に自殺する事件が起こりました。「ブラック企業」が問題となる中で、象徴的な事件として取り上げられています。

同社が略式起訴されたことを受けて、経済産業省や東京都は同社の入札参加を1ヶ月制限する措置を取りました。一部の取引先が出稿を止めているという話もあり、株価は冴えない展開が続いています

とはいえ、私は労働問題は大きな影響はないと考えています。このような問題はどの会社でも起こりうることであり、たまたま電通が目立っただけにすぎません。労働改革によるコスト増なども懸念されていますが、それは電通単体ではなく、時代の要請でしょう。

ここまで盤石の基盤を持っている電通ですから、それが簡単に崩れる可能性は低いでしょう。海外事業を含め、長期的には成長路線を維持できると考えています。

電通が抱える最大のリスクは、労働問題ではなく景気悪化リスクだと考えます。

広告は、景気に非常に敏感な業界です。多くの企業は、景気が悪くなってコスト削減を行おうと考えると、まず手っ取り早く広告費を削減するでしょう。これまでも景気悪化時には業績が悪化し、リーマン・ショック後の2009年3月期には最終赤字を計上しています。

業績悪化リスクは、リーマン・ショックの時よりも上昇しています。その要因は海外企業の買収です。買収により、「のれん」が7,000億円にも膨らんでいるのです。のれんは、買収した事業の業績が悪化すると一気に償却(損失処理)しなければなりません。

世界的な景気悪化が起きると、まず国内外の本業の業績が悪化します。さらに、買収した企業の業績見通しが悪化すると、のれんの償却による巨額の損失が計上されるでしょう。その上、売上総利益の半分以上を占める海外部門の業績は円高により目減りしてしまうのです。

Next: 業績が悪化した時こそが真の投資チャンスになる

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