業界再編が叫ばれて久しい米携帯キャリア業界で、大きな変化が起ころうとしています。時間が経てば、日本でも必ず似たような道をたどると思われます。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2017年9月15日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
激動の米携帯キャリア業界。この余波は、やや遅れて日本を襲う
4大携帯キャリア決算「3つのポイント」
業界再編が叫ばれて久しいアメリカの携帯キャリア業界ですが、大きな変化が起ころうとしています。
この変化は、時間が経てば日本の携帯キャリア業界でも必ず似たような道をたどることになると思われます。ですので、今日はその話を書いてみたいと思います。
まず始めに、2017年4月~6月期の4大携帯キャリアの決算を、簡単に整理してみます。
AT&T:売上$17.5B、230万回線の純増だが、大半がIoT関連(=携帯電話以外)
T-Mobile:売上$10B、純増78.6万回線
スプリント:売上$8.2Bm純増8.8万回線
おさらいになる部分も多いかと思いますが、ポイントは3つです。
1つ目は、Verizon、AT&Tの2大キャリアは、T-mobile、スプリントの約2倍の売り上げがあるという点です。つまりT-mobile、スプリント陣営としては、設備投資という点を考えると、広いアメリカにおいてVerizonやAT&Tと互角に戦っていくには、相当知恵が必要だという点を、まずは押さえる必要があります。
2つ目は、AT&Tは特に自動車関連になるのですが、IoT関連の回線を獲得することに大きく注力して、純増数を増やしているという点です。
3つ目は、最大のキャリアであるVerizonよりも、T-mobileの方が純増数は多いという点です。T-mobileは、様々なクリエイティブが施策を行う設備面では不利でありながらも、大きくユーザー数を伸ばしてきています。
T-mobileの破壊的な「Uncarrier」施策
T-mobileに関しては、少しおさらいしておく必要があるかもしれません。
詳しくは「孫正義氏が買収しそこねたT-mobileが凄い理由」で書きましたが、T-mobileは数年前から、Un-Carrierと呼ばれる、様々なユーザーにとって便利な施策を次々と発表し、ユーザー数を伸ばしています。
中でも「無制限データプラン」はとても破壊的で、T-mobileが無制限データプランを発表して以来、他のすべてのキャリアでも、無制限データプランが標準になり、アメリカの携帯電話業界が大きく変わったとも言われています。
その結果として、「T-Mobile’s customers are more loyal than Verizon’s, AT&T’s, and Sprint’s」という記事にもある通り、T-mobileユーザーは、他のキャリアに移りたくない、というユーザーが増えています。
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