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FX会社の企業秘密 顧客注文から利益を捻出する「カバー取引」あの手この手=岡嶋大介

みなさんはじめまして。私は最近、某FX会社の「カバー取引」のシステム構築に携わっています。そこで実感したのは、個人投資家として相対するのとは一味違ったFXトレードの奥深さ。これから数回に分けて、みなさんが知っているようでもよく知らないFXの取引の仕組みとその裏側についてお話をしたいと思います。(岡嶋大介)

プロフィール:岡嶋大介(おかじまだいすけ)
1976年東京生まれ。ソフトウェア作家兼投機家。株式会社ラガルト・テクノロジー代表取締役。東京大学理学部情報科学科卒業。相場好きを生かして開発したトレーディング・ディーリングツールを証券会社等に提供する一方、独自開発のFX業務パッケージ「TFTrader」までを手掛ける。

インターバンク市場に注文を流すだけではないFX会社の役割とは

ドル/円の取引における実需と投機の違い

個人がFXでドル/円の取引をするとき、目的はほぼ差益狙いですね。狙いどおりにレートが動いたら反対売買をして利益を確定させる取引です。狙い通りにならなくてもやはり反対売買して損失が確定します。いずれにしてもそう遠くない将来のどこかで反対売買をするので、投機的な取引の仲間です。

一方、差益狙いではない(=反対売買をしない)、実務上必要なドル/円の取引もあります。企業の活動ではむしろほとんどがこちらで、例えば原油の輸入業者は日本国内で原油を売った円をドルに換えて海外の産油業者に代金を支払いますし、自動車の輸出企業は売り上げのドルを円に換えて国内での支払いにあてます。

また、海外で子会社を作るなどの投資活動に伴って発生する為替取引もあります。こういった取引には反対売買は発生しません。個人が海外旅行で買い物のために両替をするのもこのカテゴリになります。

こういった実務の為替取引は主に銀行がやってくれます。おおざっぱにいって、原油の輸入業者や自動車の輸出業者は、銀行に持った円建ての口座とドル建ての口座の間で資金を交換する、と理解していればいいでしょう。

銀行は「インターバンク市場」で利益を狙っている

さて、各企業から為替の注文を受けた銀行は、どこかでドル/円の間の交換を実行しなければなりませんが、そこには証券取引所のような「中央」は存在しません。それがインターバンク市場です。ここに各銀行や証券会社がレートを提示して取引を行います。規模の大きな金融機関だけが参加するプロ同士のやりとりです。

ここでは、貿易の1件ごとの取引に応じて為替取引をするわけではありません。ある銀行にきた注文が、輸入企業Aからのドル買い150万ドル、輸出企業Bからのドル売り100万ドルがあったとしたら、差額の50万ドルをインターバンク市場で調達し、B社から受け取った100万ドルと合わせた150万ドルをA社の口座に入れてあげればいいのです。

このとき、ドルをいくらでどういうタイミングで調達するかの判断は完全に銀行に任せられています。この判断のことを「ディーリング」といい、できるだけ安くドルを調達できればそれだけ銀行の利益が増えることになります。

逆に、顧客の各企業に約束したレートより不利な条件でしか調達できなければ銀行は損失を被ることになります。

インターバンク市場の特徴

  • 金融機関だけが参加する
  • 大口の注文が中心
  • 金融機関は顧客の注文を単に取り次ぐのではなく、ディーリングによって巧みに収益を狙っている

株には取引所があるけどFXには?

一方、株式の取引の場合、そのほとんどは証券取引所でなされます。日本の場合、さらにそのほとんどが東証で行われます。証券会社はたくさんありますが、実店舗の証券会社でもネット証券でも、それらは東証へ注文を出すのを中継しているだけです。完全に同じ銘柄・注文内容・時刻に発注すれば、どの証券会社を利用しようとも、起こる結果は同一なのです。違うのは手数料(これは証券会社により異なります)だけです。

図:株式の場合は証券会社は中継をするだけ

図:株式の場合は証券会社は中継をするだけ

株式の場合、東証のリアルタイムの注文状況はどの証券会社でもわかるので、出した注文が取引所に届いたかどうかは東証のデータを見ていればわかります。ところが為替の場合、出した注文がその先にどう処理されるのか、注文を出した側からはまったくわからないブラックボックスなのです。

Next: ではFX会社は何をしている?意外に自由度が高いFX会社の役割

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