河川には「水利権」が存在する
水の値段は、浄水場や水道管などの設備建設費や維持管理費の他に、水そのものの値段があります。
河川、地下水など、もともと雨が地上に降った水には特定の所有者はいませんが、河川には水利権が設定されています。水利権とは河川の流水を継続的に利用できる権利のことで、国土交通省ホームページには以下の説明が載っています。
「水利権」という用語は、法律上のものではなく、水利権について規定している法律である河川法の中には出てきません。水を利用する権利として従来よりこの呼び方が定着しているものです
河川法では河川の流水を利用するものは河川管理者である国土交通大臣、または都道府県知事の許可を受けなければならないとしています。
水道事業者が河川を水源として水を供給する場合は、水利権を得なければなりません。
一方、地下水は土地所有者の私有財産として見なされることが多く、水道事業者が所有する土地から汲み上げた水は自由に使用することができます。
水利権を得た河川からの水や地下水は水道事業者にとっては自己水源となりますが、自己水源が少ない地域では、水道事業者は、県や地方自治体がいくつか集まってつくられた特別地方公共団体としての広域水道企業団が取水し、浄化した水を購入することになります。
これを「受水費」と呼び、水道水の原価に含まれることになります。
地方自治体は、住民に安定した水を供給するために、雨水を貯めて自己水を貯蓄することも行っています。それでも足りない分は、受水に頼ることになります。
つまり、地方自治体によって水道料金が異なるのは、受水費の割合が高いか低いかでも異なるのです。この料金を決めるのに、古くから関係性が保たれて昔の安い価格のまま維持されていれば、その自治体の水道料金は安いことになります。これが、「歴史的要因」になります。
安易に「水道事業の民営化」に踏み切るのは危険
今後の水道料金値上げの鍵は、以下の2つが挙げられます。
・排水管等、水道施設の老朽化、それに伴う修繕の必要性の有無
・人口減少
これらはとても大きな要素で、解決が難しい問題です。
そこで、国会で議論されているのが「水道事業の民営化」で、事業のコストを低く抑えるために民営化を推進しているのですが、民営化をしたからといって、状況が改善されるわけではありません。
水道事業の民営化は、国鉄や電電公社や郵政の民営化とは性質が異なります。ましてや電気料金の自由化とも異なります。
設備費がかさむリスクを抱えながら、人口減で水道料金総額が減る可能性がある事業の民営化なのです。
電気料金は、電力供給側のインフラ整備を民間が請け負うのではなく、あくまでも販売とメンテナスを請け負うものですが、水道事業は、配管設備修繕等も含まれますし、電気のように「水を作る」ことができません。
また競争の原理が働きづらいところもあり、水道事業のインフラ設備を考えると、一般事業者が簡単に参入できるものではないようにも思えます。
そうなると…
・配管設備の修繕にどれだけコストを掛けるのか
・供給システムをどれだけ効率化できるのか(供給先の統合など)
が、事業存続の鍵となりそうで、それは、住民サービス向上とは反比例の関係になるようにも思えます。
つまり、水道事業の民営化が「コスト削減」を求めるものなら、それはサービスの質の低下につながる危険性をどう回避するかがセットでないと成り立ちません。
水道事業の民営化は、
・配管修理をするなら水道料金を値上げする
・今までどおりに水道を供給するなら水道料金を値上げする
といったことを迫るもののように思えてならないのですがね。