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花王の化粧品は「マスク時代」に生き残れるか?迫られる3つの戦略転換。今さらカネボウとブランド統合した理由=馬渕磨理子

高価格帯の化粧品の拡大に商機

花王のカネボウ買収は、もともと、首位の資生堂を追い抜くために行われた背景があります。

2006年に粉飾決算で窮地に陥った、業界2位のカネボウ化粧品の買収に踏み切りましたが、企業文化の違いから融合に時間を要してしまいました。

カネボウは化粧品の歴史が長く、花王が強いスタンスを取れなかったことも背景にあります。特に、買収後には2013年の、カネボウの美白化粧品を使用した皮膚がまだらに白くなる「白斑事件」もあり、花王とカネボウのシナジー効果を生み出すことができていませんでした。

今回の統合により、今後、求められることは、高価格帯の化粧品の拡充です。

化粧品事業を「メイク化粧品」と「スキンケア化粧品」に商品を分けた場合は、一般的に利益率は「スキンケア化粧品」が高くなる。高価格帯のスキンケアの売上高を大きくすることで、利益率の高いビジネスができるわけです。

花王の「メイク」:「スキンケア」=5:5であり、資生堂やコーセーは4:6とスキンケア比率が高い傾向にあります。

さらに、コロナの影響でメイクをする機会が減りましたが、スキンケア化粧品は底堅い需要となっています。

資生堂の戦略は、ヘアケア商品「TSUBAKI」を欧州系大手投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズに1,600億円で売却しました。

これによって、ヘアケア商品や洗顔料は単価1,000円前後ですが、高価格帯のスキンケア商品は1万円を超えてきます。今後、高価格帯へのシフトを鮮明にしています。

花王も「高価格帯の化粧品」の比率をいかに高められるかが勝負になってきます。

美容部員に頼らないEC化を進める

花王は、2021年4月1日にグループの美容カウンセリング会社「ソフィーナビューティカウンセリング株式会社」と「カネボウビューティカウンセリング株式会社」を統合し、新たに「花王ビューティブランズカウンセリング株式会社」を設立します。

新会社では、美容部員によるプロフェッショナルなカウンセリング活動を通じて、花王化粧品事業が有するブランドの世界観・価値観の伝達と、愛用者の維持・拡大の活動を一層強化していくとしています。高価格帯のスキンケア商品を販売していくためには、カウンセリングを行って販売するため、美容部員の存在が欠かせないわけです。

しかし、美容部員を大きく抱えると高い人件費がかかり、利益率を低下させることにも繋がります。美容部員だけに頼らず、EC売上高を高めることがカギになってきます。花王の化粧品事業のEC化率は10%程度だと、20年7月の決算説明会で述べています。

一方、化粧品業界で一歩先をいく、資生堂のEC化戦略は、高価格帯化粧品のEC売上高比率を現在の20%から28年までに35%まで引き上げる目標を掲げています。

花王もブランド統合後、どの程度利益率を高めることができるのかがポイントになってきます。

Next: グローバル展開も十分に可能、中国市場のシェア拡大に活路

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