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熊本地震発生にかんがみ、消費税率の引き下げを!=佐藤健志

来年4月に予定されている10%への引き上げについては、熊本地震が発生する前より、延期の可能性が高まっていると報じられてきました。
しかし「経済政策をめぐる従来の流れを変える」ためには、ただ延期するだけでは十分ではない。
「今までとは違った方向性に転換する」ことを、象徴的に宣言するのですから、少なくとも8%で凍結、できれば5%への引き下げが求められます。
そのうえで、被災地の復興、および強靱化の達成に関し、十分な予算を投入するのです。

税率を引き下げたら、ますます復興や強靱化の財源がなくなるという主張もあるでしょうが、それによって経済が活性化されれば、むしろ税収は増える可能性が高い。
安倍総理も最近、「消費税率を5%のままにしていたら、税収は今頃もっと増えていただろう」という旨を語ったとの報道がありました。

振り返ってみれば、阪神大震災のときも、東日本大震災のときも、政府は発生からほどなくして、消費税率の引き上げに踏み切っています。
阪神大震災の場合は、2年後の1997年4月より5%への引き上げ。
東日本大震災の場合は、3年後の2014年4月より8%への引き上げ。
むろんどちらも、財政規律重視の発想に基づいたものでした。

しかるに1997年が、わが国の〈貧困化〉の始まりとなったことは、本紙執筆陣のみなさんが指摘するところ。
日本の労働者の実質賃金は、この年を最後に下がりだしたのです。
2014年の増税が、景気にもたらした悪影響については言うまでもないでしょう。
経済が冷え込み、貧困化が進む中で、復興が順調に進むとは信じがたい。

つまりは
「巨大災害によって国民に甚大な被害が生じ、国家が深刻な危機に陥ることよりも、政府の借金が増えることの方が怖い」
どころか
「現に発生した巨大災害から、国民がしっかり立ち直れなくとも、政府の借金が増えなければそれで良い」
という判断を、この20年ほど、わが国は折に触れて示してきたのです。
これでは経世済民も何もありません。

国民の生命と安全を守ることこそ、政府の果たすべき最も根本的な役割のはず。
くだんの大原則に立ち返るためにも、思い切った転換が必要になります。
もとより財務省などは猛烈に反対するでしょうが、総理が(改革ならぬ)救国のドリルの刃となって、それを打破することを期待したいと思います。

なお『表現者』66号には、私も「日本消滅というユートピア」という論考を寄稿したほか、座談会「非常の時を如何に生きるか」にも参加しています。
こちらも、ぜひご覧ください。

【関連】熊本地震と国土強靭化=三橋貴明

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