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熊本地震発生にかんがみ、消費税率の引き下げを!=佐藤健志

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年4月20日号より
※本記事の本文見出しはMONEY VOICE編集部によるものです

復興と国土強靱化を推進するために今こそ「消費税率の引き下げ」を

今週は本来、朝日新聞政治部次長・高橋純子さんのコラム記事「『だまってトイレをつまらせろ』 あなたならどうする」をめぐる考察の3回目をお届けする予定でしたが、熊本地震発生を受けて、急遽、内容を変更いたしました。
ご了承下さい。
高橋さんのコラム記事をめぐる3回目の考察は、次週、4月27日に行いたいと思います。

ご存じのとおり、さる4月14日、熊本で最大震度7の地震が発生しました。
わが国の気象庁が発表する震度は、10の階級に区分されていますが、最高は「震度7」ですから、大変な揺れだったことになります。

10階級なのに、なぜ「7」が最高なのかと言うと、震度5と震度6について、それぞれ「強」「弱」の二種があるうえ、「震度0」という区分も存在するため。
0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10階級なのです。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/

14日の地震、マグニチュードは6.5でしたが、4月16日には、最大震度6強、マグニチュード7.3の地震が発生。
これは阪神大震災に匹敵する規模だそうです。

気象庁では、マグニチュードがより大きい16日の地震を「本震」と位置づけ、14日の地震はその「前震」だったと規定しました。
けれども専門家の中には、 「今回(注:4月16日)の地震が本震なのかどうか、まだ分からない」として、さらに規模の大きな地震が今後発生する可能性を指摘する人もいます。
そうでなくとも、余震は数ヶ月にわたって続くかも知れないとのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160416-00010013-nishinp-soci

犠牲となられた方々のご冥福を祈るとともに、被災されたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。

2011年、東日本大震災が発生した際、「今後、日本列島周辺では地震活動が活発化する」といった趣旨の指摘がなされましたが、その通りだったと思わざるをえません。
現に今回の熊本地震については、南海トラフ地震の前兆かも知れないとする主張まであります。
国際情勢のみならず、災害対策という点でも、わが国の安全保障をめぐる環境は厳しさを増しているのです。

となれば、いよいよもって「国土強靱化」を積極的に推し進めねばなりません。
けれども政府が、果たしてそのような方向性を取るかどうかは、決して楽観できないのが正直なところ。
緊縮財政志向、とりわけ公共事業の抑制志向がすっかり定着したわが国では、財源不足を理由に、強靱化への取り組みがズルズル遅れてしまう事態が生じかねないのです。

この懸念をストレートに表明したのが、くしくも4月16日に発売された『表現者』66号に収録されている、藤井聡さんの論考「『国土強靱化基本法』の運用を真面目に考える」。
http://www.amazon.co.jp/dp/B01BVS0CCU/

論旨を私なりに要約すれば、以下のようになります。
1)国土強靱化基本法が制定されたといっても、具体的な取り組みが遅ければ、強靱化が達成される前に巨大災害が生じてしまう。
2)いいかえれば、強靱化の取り組みはできるだけ迅速になされなければならない。
3)にもかかわらず、現在の日本では財政規律へのこだわり(=緊縮財政志向)から、強靱化に十分な予算を投入できないのが実情である。
4)すなわち、わが国では「巨大災害によって国民に甚大な被害が生じ、国家が深刻な危機に陥ることよりも、政府の借金が増えることの方が怖い」という判断がなされていることになるが、これは本末転倒ではないか。

正論です。
だいたい強靱化どころか、東北の復興も未だ道半ば。
緊縮財政志向に固執するかぎり、「財源がない」という理由、ないし口実により、東北と九州の復興が、どちらも満足になされない恐れだってあります。

今年の3月30日付で本紙に寄稿した「国家の店じまい」ではありませんが、災害にやられた地域から疲弊・衰退が進んでゆき、日本が徐々にしぼんでゆくというシナリオが、現実のものとなりかねないのです。
復興、および強靱化をまっとうに推進するには、経済政策をめぐる従来の流れを変える必要があると言わねばなりません。

そのような方向転換の突破口となりうるものは何か?
提案したいのは、「消費税率の引き下げ」です。

Next: ただ延期するだけでは不十分、消費税率は5%への引き下げを

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