大阪都構想は住民投票で2度も否決されましたが、今度は大阪府・大阪市両議会で、大阪都構想と同じ効力をもたせる「大阪府市一元化条例」がしれっと成立しました。いったい何が起きたのか。そして大阪市の予算を使って大阪府は何がしたいのか。その裏側に迫ります。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2021年4月5日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
またもや大阪都構想?
大阪市をなくして行政組織を大阪府に一本化する大阪都構想は、多額の税金を使って2度も行った住民投票の結果、住民から「No」を突きつけられました。
それぞれの住民投票前には大阪府知事と大阪市長を入れ替える選挙まで行いながら、それでも否決されています。
そして今度は、大阪府・大阪市両議会で、大阪都構想と同じ効力をもたせる「大阪府市一元化条例」を成立させたのです。
住民が、直接票を入れることができない状況で成立させたもので、間接民主主義とはいえ、直接投票で否決された大阪都構想を間接的に実現させたものとなりました。
ブログにも書きましたが、そもそも住民投票を行うのは、住民側からの要望で、住民の権利として行政側に物申す手段だと思っていました。
それを、行政側が持論を通すために住民投票を実施するというのは、歴史的にも珍しいのではないでしょうかね。住民からの発議による住民投票なら、住民の税金を使うことは納得できます。でも、大阪都構想を問う住民投票って、なんかちょっと違和感がありますね。
郵政民営化を実現するための衆議院解散も同じでしょう。沖縄で行われた米軍基地辺野古移転の是非を問うものが、まさに住民投票としてはしっくりとくるのですがね…。
大阪都構想の2回目の住民投票なんて、あのコロナ禍で強行したものですからね。巨額の税金も投入されての決議が、あれからまだ半年もたたないうちに、こうもあっさり、住民投票はなかったものにされてしまうなんて、これでよく大阪市民は怒らないものですね。
大阪府市一元化条例とは
大阪府へ一元化を図る都市計画権限については、大阪全体の視点から府市協調でまちづくりを進めるため、今後の都市計画の方針となる都市計画区域マスタープランや、大阪の都市機能の向上に欠かせない拠点開発、広域交通網の整備等に大きく関係する都市計画権限について大阪府への一元化を図ることとしている。
これが大阪府市一元化条例の説明になっています。
これは大阪都構想と同じ主張で、「府市の二重行政の解消」を全面に出した「大阪府市一元化条例」ですが、ようは成長戦略や都市計画の権限の一部を府に事務委託するのが柱となったもので、穿った見方をすれば、「お金は大阪市、使う権限は大阪府」というようにも思える条例ではないでしょうかね。
・大阪府にはお金がないが、大阪市にはお金がある
・その大阪市にあるお金を、大阪府が自由に使えるようにする条例
これは穿った見方でしょうか。いずれにしても、公共事業の権限はすべて大阪府に一元化すると、はっきりと書いてはありますね。
大阪府は政令指定都市・大阪市以外の市町村を管轄することになっていて、財政面でも大阪市のほうが潤沢にあり、今でも1,000億円以上の貯金があるとも言われています。それを大阪府は自由に使いたいのではないかというのが、条例に異を唱える側の主張になっています。
ちなみに、大阪都構想の議論でも言われていたことですが、財政規模などから、大阪市議は大阪府議を下に見ているところがあると言っていましたね。このことからも、大阪府と大阪市の、財政面も含めた関係性(いわゆる仲の悪さ)が垣間見られるかと思います。
今は大阪府と大阪市は、同じ大阪維新の会がトップ担っています。いずれ府と市がねじれ状態になったとしても、府都市が一元化できるように、二重行政にならないように法整備をしておくという建前は、理解はできるものです。しかし、どうもこの条例の本質は、違うところにあるのではないでしょうかね…。