背後にいるのはロシアか?年々膨らむ被害金額
このような新しいタイプのものが出てくると、当然のように対策費用がかさむことになる。
今回のケースでは、すでにウェブサイトに被害者から盗まれた40以上のデータが公開済みとなっている。このようなケースのでの典型的な身代金の要求額は20万〜200万ドルとされている。多いか少ないかは別だが、無駄な費用であることに変わりない。
このようなダークサイドのパターンが出てきたことで、ランサムウェアはこれまで以上に拡散しやすくなっているという。調査によると、ランサムウェアの被害者が攻撃相手に支払った額は、2020年には前年比4倍超の3億5,000万ドルに達したという。
とてつもない額である。このような資金は、いずれ悪い使われ方をするのがオチである。
今回のケースでは、攻撃側がやや反省の弁を示すなど、行き過ぎた攻撃は避けられているようである。しかし、歯止めがかからないケースがこれから出てきてもおかしくない。
今回のケースは、一企業の問題で終わらせることになりそうだが、米国政府はそうは見ていないだろう。裏の組織の存在を暴くため、相応のコストをかけているはずである。
今後はこの手の問題が増えてくるだろう。今回は石油パイプラインが標的になったが、これが飛行機や鉄道などの運行にまで手が及ぶと、それこそ大惨事になる。そのリスクは非常に高いだろう。要人が標的になれば、それこそ戦争に直結する。
このような話は、ロシアが裏にいるとの見方が多い。米国もうかうかしていられないのである。
コロナ禍でも減少しない世界各国の軍事費
このようなハッキングは裏の世界ではあるが、表の話もかなりエスカレートしてきている。
軍事費の話である。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告書によると、2020年の世界の軍事費は、一部財源が新型コロナウイルス対策に振り向けられたにもかかわらず、2.6%増の1兆9,800億ドルに達したと時事通信社が報じている。
それによると、5大支出国は、米国、中国、インド、ロシア、英国の順で、全体の62%を占めたという。SIPRIのディエゴ・ロペス・ダシルバ研究員は、新型コロナのパンデミックは20年の世界の軍事費に大きな影響を与えなかったとの見解を示している。各国とも別予算ということなのだろう。
しかし、パンデミックの影響で世界のGDPが減少したため、GDPに占める軍事費の割合は平均で2.4%と、2019年の2.2%から上昇した。このような考え方は正しいかは別だが、いずれにしても、経済の落ち込みを無視する形で各国とも軍事費を増やしたことは事実である。